『星新一の作品集16・殿さまの日/城のなかの人』17編を、
3巻に再編集した時代小説集。
'71(S46)夏〜'73・'74(S49)に掛かる冬の間の2年半、
著者44〜47歳の脂の乗りきった時期の執筆。
しばらく絶版状態が続いていた為、
ファンの方で、未読の方も多いのでは?
また、まだ星新一さんの作品に遭遇していない方、
歴史が苦手で敬遠なさっていた方に、
是非ともお奨めしたい作品集。
江戸時代に産まれ、育った。
いまの事が手に取るようにわかるのも当たり前。
これが私の現在であり、現実なのだから…。
と、読者をごく自然に江戸時代の住人にしてしまう。
その時代に生きているのだから、
その時代の描写に説明は要らない。
宇宙を舞台にしたSFショート・ショート同様、
知識の事前準備なしで、その世界へと誘ってくれる。
秀頼を描いた 「城のなかの人」 は、
この17編の白眉。
モチーフを側面から捉えており、
見事としか言いようがない。
1,000編以上ある作品の中でも、
いつまでも心に残る、
忘れられない珠玉の一編。
この商品の賞味期限に年月日の記載はない。
小粒だが、いつまでもキラキラと輝き続けるダイヤたちなのだ。
『天の巻』6編
1 .殿さまの日
3 .江戸から来た男
十.道中すごろく
12.紙の城
B .春風のあげく
D .すずしい夏
『地の巻』6編
2 .ねずみ小僧次郎吉
11.藩医三代記
7 .かたきの首
九.島からの三人
5 .元禄お犬さわぎ
八.厄よけ吉兵衛
『人の巻』5編
四.薬草の栽培法
六.ああ吉良家の忠臣
A .城のなかの人
C .正雪と弟子
E .はんぱもの維新
アラビア数字と漢数字を混ぜ、番号順に読めば、
『殿さまの日』文庫本と同配列。
アルファベットを順番に読めば、
『城のなかの人』と同配列。
アラビア数字のみで、5と7を入れ替え、
1.2.3.7.5.11.12と読めば、
『殿さまの日』単行本と同配列。
(単行本にない増強5編は3巻に分散)
『殿さまの日』文庫版は、
新潮オンデマンド・ブックスで購入可能。
¥3,885 (2012.5現在)
『城のなかの人』は、角川文庫
'08(H20)11.22 から復刊。
『殿さまの日』の文庫本が絶版の為のレビューです。
'09(H21)のNHK大河ドラマ
『天地人』に便乗。
ドラマは大河というより、ダイコン畑だったが、
作品集は、天の川のきらめき。
松本大洋さんによるカバー装画も、なかなか良い。
商売っ気丸出しだが、
3巻で ¥1,764 (2012.5現在)とお得。
ここはポプラ社さんの思惑通りに、
ズボッとはまりましょう。
※一つ難があるのは、再編集による作品配列。
『地の巻』『人の巻』は大した問題はないが、
『天の巻』は酷い。
誤解はして頂きたくない。
作品自体は皆、粒揃いなのだ。
ただこの配列で読むと、
少し重く、暗くなるかも知れない。
17編で一番最初に読むのに適しているのは 「殿さまの日」 だが、
その後 「江戸から来た男」 を飛ばし、
先に 「道中すごろく」 を読むか、
『天の巻』と『地の巻』を、
交互に読んだ方が良いように思う。
☆2つにしたいところだが、3巻纏めて購入し、
自由に読んで下されば、取るに足らない事。
『殿さまの日』の文庫が復刊されれば別で、
レビューそのものの削除となるが、
まず、それはないでしょう。
(中古本に抵抗のない方へは、
『殿さまの日』文庫本の古本の入手という方法もある)
ここまでポプラ社さんの編集の悪さをフォローし、
皆さんに薦めるのも作品が素晴らしいからに尽きない。
この作品たちと出逢わない事が不幸。
迷わず『天の巻』『地の巻』『人の巻』3巻共購入すべし。