伝説のステアマリスの吉田シェフに関するドキュメンタリー本である。渡仏して以降の軌跡が隠すところなく描かれている。ミシュランの星を取ることが如何に敷居が高いことであり、多くのシェフが日々どんな気持ちで細心の注意を払いながら調査員の来訪を待ち望んでいるかが行間からにじみ出してくる。顔をみれば人生がわかるという言葉があるが、スターシェフにもかかわらず彼の顔には深く険しい皺が刻まれている。すでに星を取り、日本に凱旋し東京に支店を出して久しいが、どんな思いで彼がここまで到達したのか、この本には赤裸々に書かれている。パリで掴んだ、大地(テロワ)の料理というコンセプト。家族のこと。ロブションとの関係。誰もが星を予期した年のまさかの落選。落選したことで逆に記述に深みが出ているように思う。ドキュメンタリーとして読み応え抜群だが、なんとなく本人はもっと濃いんじゃないかとも思わせる、そんなドキュメンタリー作品です。