星への旅、青い表紙に白い星が浮かぶ。ファンタジックな装丁と題名はこの本に仕込まれた罠を隠す。
トラックに乗り込みさまよう若い男女のグループ。そのメンバーの各々が持つ個性、行動と発言は、どこかしら読者の身に覚えがあるような、かつての青臭い、ほろ苦い記憶を呼び起こす。それと同時に「星」へ向かうトラックは、人生の暗喩となっており、生きるとは何か、人生とは何かを考えさせられる。
すでに出発する前から「星」へ向かうことだけは決められているトラック。その中で繰り広げられる青年たちの様々な思考と内省。読み進めていくと、まるでこの今も自分がトラックに乗り込んでいる、「星」へ向かっている最中なのかもしれない、と感じる。なぜなら我々もまた、常に「星」へ向かっているからだ。
判断力や現実に耐えられる強い状態で読んでほしい。そうでなければ「星」への特急列車に乗ることになる。それだけ、この本は力を秘めているのだ。
今日、作者吉村氏の訃報をニュースで拝見しました。ご冥福をお祈りします。