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星への旅 (新潮文庫)
 
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星への旅 (新潮文庫) [文庫]

吉村 昭
5つ星のうち 4.2  レビューをすべて見る (9件のカスタマーレビュー)
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登録情報

  • 文庫: 326ページ
  • 出版社: 新潮社; 改版 (1974/02)
  • ISBN-10: 4101117020
  • ISBN-13: 978-4101117027
  • 発売日: 1974/02
  • 商品の寸法: 15 x 10.6 x 1.4 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.2  レビューをすべて見る (9件のカスタマーレビュー)
  • Amazon ベストセラー商品ランキング: 本 - 140,709位 (本のベストセラーを見る)
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10 人中、10人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
一種の爽快感 2009/11/28
 "呼吸がとまった瞬間から、急にあたりに立ちこめていた
 濃密な霧が一時的に晴れ渡ったような清々しい空気に私は包まれていた"

冒頭のこの一節から始まる「少女架刑」。
献体に出された、自身の死体をホルモン漬けにされ、
解体されゆく少女から見た世界が淡々と語られていきます。

死体になりながらも、感覚と肉体は完全に分離されておらず、
男性医師のその手の感触の描写はなまめかしく、
解体場面は肉体的且つグロテスクに描かれます。

題材とは反して文章には一貫して透明感があり、
ラストの骨の崩れる音を聞くシーンでは、
読み手に一種の爽快感さえ与えます。
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18 人中、14人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
 星への旅、青い表紙に白い星が浮かぶ。ファンタジックな装丁と題名はこの本に仕込まれた罠を隠す。

 トラックに乗り込みさまよう若い男女のグループ。そのメンバーの各々が持つ個性、行動と発言は、どこかしら読者の身に覚えがあるような、かつての青臭い、ほろ苦い記憶を呼び起こす。それと同時に「星」へ向かうトラックは、人生の暗喩となっており、生きるとは何か、人生とは何かを考えさせられる。

 すでに出発する前から「星」へ向かうことだけは決められているトラック。その中で繰り広げられる青年たちの様々な思考と内省。読み進めていくと、まるでこの今も自分がトラックに乗り込んでいる、「星」へ向かっている最中なのかもしれない、と感じる。なぜなら我々もまた、常に「星」へ向かっているからだ。

 判断力や現実に耐えられる強い状態で読んでほしい。そうでなければ「星」への特急列車に乗ることになる。それだけ、この本は力を秘めているのだ。

 今日、作者吉村氏の訃報をニュースで拝見しました。ご冥福をお祈りします。

 
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2 人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By 一市民 トップ500レビュアー VINE™ メンバー
後年の”高熱隧道”や”関東大震災”で、社会的事件の中での大量の死を描いてきた
吉村昭氏が、死そのものをテーマに描いた初期の短編集。いずれもペシミスティックな
雰囲気に溢れ、後年の大作の背景には、作者自身の結核の体験も含めた、死に対する
この鋭利な感性があったのだと納得させられる。

作品はいずれも情緒的な雰囲気のタイトルとイントロダクションで始まるが、途中に
挟まれる生々しい死の描写を経て、読む者の感情に鈍い疵痕を残す。

若さゆえの退屈さへの嫌悪が集団自殺へと暴走する経緯を描いて、日常のすぐ先に
口を開ける死の存在に戦慄を感じる表題作の”星への旅”。

解剖される少女の視点で見た献体の過程を通じて、モノとして扱われる死者の孤独を
即物的に描き出す”少女架刑”。

少女架刑とストーリーをオーバーラップしながら、死体標本作りに取りつかれた男の
暗い情念を描き、重い読後感を残す”透明標本”。

心中を繰り返す(太宰治を思わせる)特異な性格破綻者を、それに巻き込まれた
常識的な主人公の視点で描き、死の価値すら相対化する怪作“石の微笑”。
等々。

昭和の貧しかった時代ならではの時代背景も感じられるが、そこに描かれる感情は
今日的で、とても40年以上前に書かれたものとは思えない。読む人ごとに、死に
ついて考えさせられ、また人によってはこの本で描かれる感情を自分でシミュレート
してしまうほどの危険な本にもなろう。文学賞を取り損ね無冠ではあるが、後世にも
大きい衝撃を与え続ける、戦後文学の秀逸な短編集としてこれには高評価をつけたい。
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