日本で見ることのできるチョン・ジヒョンの8本の出演作にはこれで全て目を通すことができた。テレビ局のディレクターを演じたチョン・ジヒョンは、「猟奇的な彼女」のような華やかさや「ラスト・ブラッド」のような存在感こそないものの、これまでになく等身大の女性を演じ、素顔の魅力が感じられた。特にスーパーマン=イ・ヒョンソクの過去が明らかになる後半、彼女は台詞以上に表情によってさまざまな感情を演じ分けていた。「ラスト・ブラッド」では彼女の身体能力の高さが明らかになったが、この作品では彼女の演技力が発揮されていたように思う。
また、地味なチョン・ジヒョンのよさを活かしたのは相手役のファン・ジョンミンの存在によるところも大きい。彼の出演作といえば「シュリ」くらいしか見ておらず、これまではほとんど認識していない俳優だった。しかし、チョン・ジヒョン以上に存在感があり、特に前半と後半の表情の違いはまるで別人かと思うほど。スーパーマンとして登場する前半は笑顔のかわいいおじさんなのだが、火災に巻き込まれた「地球の友」の少女を救いにいくシーンの彼は、父親の顔を取り戻し、文句なくカッコいい。韓国ではミュージカルなどにも出演している演技派俳優として知られているらしい。これからも要チェックだ。
ストーリーも106分という上映時間の中で、そう簡単に結末が見通せない構成になっている。「本当に宇宙から来たの?」「病気なのか…」「そういう過去があったとは!」「少年のころに何が?」などと次々と謎が明らかになっていき、交通事故による火災が起きる。そして「最後の任務」を果たす本当の結末。終わってみれば意外にこじんまりしていたが、それはそれで悪くなかった。韓国ではチョン・ジヒョンの復帰作として期待が大きかった割に興行収入はふるわなかったらしいが、私にとっては彼女の出演作の中でも印象深い作品となった。