「登場人物の機能」の章が素晴らしい。この章では、ロシアの昔話を機械のように分解し、多くの作品に共通する構造や機能を30ばかり挙げて解説している。具体例にはロシア民話の特色が出ているが、個々の機能からは物語の普遍的手法が読み取れる。実際、宮崎アニメやドラゴンクエストなど、現代の若者をとりこにしている作品でも、同じ構造や機能が利用されていることに気づく。
内容を少し引くと、たとえば「留守」という機能で被保護者たちと保護者とが一時的に離れ、「禁止」という機能で安全領域と危険領域の境界が示される。「違反」という機能によって彼らは危険領域へ踏み込む。そこから脱出するだけでも物語が始まってしまうし、危険領域で何かを失ったり、誰かが連れ去られたりすれば奪還の物語が始まる。さらに「贈与者(力になってくれる人)」「敵対者」など、物語を発展させる人物が現れて物語はどんどん盛り上がっていく。
一冊を通して読むとなると学術的になりすぎる嫌いはあるけれど、物語の作り手になりたい人はぜひ「登場人物の機能」だけでも一読すべきでしょう。応用のためにシンプルな基礎を固める意味でも、愛読している小説を分析するためにも、ヒントに満ちた一冊。26歳になってからこの本に出会った僕はもっと早く出会えなかったことが悔しくて仕方なかった。