本書は明治維新期における、社会変容を導いたメカニズムを「柔構造」と名付け、その「柔構造」を国際比較と歴史比較の視点から分析したものである。
第一部では、明治維新期の日本における、「国家目標」、グループ間の「合従連合」、「指導者」自身の夫々の可変性と柔軟性について述べられる。
明治維新期の指導者たちは、幕末期には「富国強兵」と「公儀輿論」、維新期には「富国」「強兵」「憲法」「議会」という、複数の国家目標を追求した。それぞれのリーダ間の目標の優先順位の変更やリーダー同士の合従連合、目指す目標数や内容の変更は状況に応じて行われ、なおかつ、その結果、大きな遺恨を残すことは無かった。この政治的「柔構造」は東アジアの開発独裁の「硬構造」に比べてはるかに強靭だったとする。
第二部では、幕末期の改革諸藩(薩、長、土、肥、越前)夫々の「柔構造」について検討されている。中でも薩摩藩の「柔構造」は殆ど完璧であったが、その事が西南戦争を惹き起す要因となった事が述べられる。
第三部では、幕末維新期に柔構造を生みだした諸要因について分析されている。徳川幕府の正統性の喪失により、政治競争が許容されるようになり、それは民間ナショナリズムという精神基盤と、対外危機の中で政治の遠心力と社会の求心力のバランスが保たれ続けたという事が述べられる。
国際比較の視点から明治維新を分析するというのは、とても有意義な事だと思う。文章も平易で読みやすい良書だった。