昨今上梓されたドナルド・キーン氏の「明治天皇」の基礎資料となったことで俄かに有名化した。
宮内庁編纂の該書13巻の内、第一巻は、明治天皇誕生の嘉永五年より明治元年十二月までを収める。
編年体で全巻に通じる出典は、側近堂上人の日記、各藩維新功労者の日記、藩史など当時の資料が網羅されている。
口語訳ではなく漢文読み下し、祝詞などの掲出においては白文のままであり、文語体の読み辛さは現代人の共通するところである。
時事的な部分と宮中行事の細々とした内容が日記体の日付の交互に脈絡なく配置されているので、幕末の外交始末や事変の経緯を辿るについては
読者にとり甚だ集中力を強いられる。
しかし、この「紀」に手を染める読者は、すでに維新関連の他著で歴史的経緯を脳裏に踏まえている方々が多いと思われる。
加えて、該書においては、別巻に索引が準備されているので、人名牽引や事項牽引を参照したピンポイントの読書も可能である。
全巻読み継ぐに煩わしい方はそうした方法で該書に接しられるとよいであろう。
前述の如き資料の収集編纂なので、木で鼻をくくる官制記述域を脱しない。
ここにはお仕着せや外連に毒された著作者の意図が入る余地はない。
現代からすれば明治維新の激動すらも、往時の人々においては日常的な生業の積み重ねであった。