画家で絵本作家の安野光雅氏による奈良の明日香村の風景を描いた水彩画集でした。見開きの右ページに作者のコメントが書かれ、左のページに作品が掲載してあるという形式です。
つい先日、安野光雅氏の展覧会を訪れてきたばかりです。本書掲載の作品の数点も美術展に出品してありました。実物との比較も出来ましたが、淡い色調は上手く再現してあると思います。
カラーで30点の作品が掲載してあり、優しい色調で自然が残っている明日香の景観を描いています。この歴史的風土がもっている大らかな雰囲気がそのまま感じられるようでした。環境指定地域は建物の規制や使える色のきまりがあり、それらの景観と水彩画の画風が見事に呼応していました。
多くのエッセーを書き続きてこられ、菊池寛賞も受賞した筆者ですので、文章も本書の価値を高めているでしょう。「わたしは『明日香』の風のなかで呼吸してきただけです」という作者のコメントが秀逸でした。
70ページにスケッチ地図「明日香村周辺」があり、地図上に作品番号がふられ、スケッチした目線の方向が矢印で描かれていますので、実際に明日香を訪れて作品の風景を眼で確かめられるような配慮がなされていました。
描かれた30の作品の場所(タイトル)をご紹介します。
高家から甘樫丘、飛鳥川、岡寺から、治田神社から、棚田、上居から、上居から島庄、上居から橘寺方面、祝戸・阪田、都橋から上居・細川、稲渕の峠から、稲渕、稲渕から祝戸、稲渕峠から貝吹山、鬼の雪隠付近、鬼の俎付近、高家、高家から三輪山、耳成山、下八釣から、御厨子観音付近から、忍阪から倉橋・多武峯、下り尾、大宇陀本郷から、阿紀神社付近から、阿騎野、万葉文化館から、桧隈、大和平野遠望。