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29 人中、26人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
買って絶対損はなし,
By
レビュー対象商品: 明日また電話するよ (コミック)
山本直樹自ら認めるベストワークス。各話の最後に著者による解説も少しついていて、巻末には著者がこれまではまってきた本とかマンガについても紹介されています。著者の作品を読んできている人なら読んだことがある作品もちょいちょいまじっていると思いますが、再読してもやっぱりいい。とくに表題作はほんとに鳥肌物です。ベストワークスにこのタイトルを冠したのもわかります。たいして何も起こらない話なのですが、短歌だとか俳句みたいに省いて切りつめて研ぎすまされていて、そのことがむしろ雄弁にニュアンスを語っているというような。またこの表題作、冒頭の数ページがカラーですが、ものすごいきれいです。収録作は、みはり塔、ぽつん、泳ぐ、コールド、渚にて、アナログ温泉、テレビばかり見てると馬鹿になる、肉彦くんとせんせい、Cl2、呼ぶ声、明日また電話するよ、以上。
12 人中、9人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
坦々と、晴々と,
By ロックス (福岡県) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 明日また電話するよ (コミック)
山本直樹の作品に登場する少年少女は皆、別に特別な環境に置かれている若者なわけではない。何かから極端な抑圧を受けているわけでもなく、何かを猛烈に求めているわけでもなく、ただ流れるように同じような日々を過ごして、多分、大人になってからもこうして毎日を繰り返しながら生きていくんだろうな、と思わせるような、そんな若者たち。そして、彼らはドラマチックな展開を経て出会うわけでもなく、何か切実な思いを共有するわけでもなく、それがごく自然のことであるかのように、体と体を重ね合わせていく。それは、読む人によっては、将来を見据えていない、その場限りの手軽な快感に身を沈める、即物的な生き方をする若者たちの、軽薄な物語に思えるかもしれない。しかし、よく読んでみて欲しい。決してそうではないのだ。すべてを終えた後に広がる、何の特別な感情も象徴しない、でもどこか清々しい、風の通り抜けた後のような青さを感じさせる風景。そこに映る解放的な何かは、汗と生温かさの中で果てるイカ臭いカタルシスとはまったくもって無縁のものだ。どれだけ体を交わしてもどこにも辿り着けない毎日に、彼らは少なくともフラストレーションや悲壮感や後ろめたさを抱えてはいない。繰り返される毎日でかまわない。「明日また電話するよ」。そう声を掛けるのと同じぐらい近いところに、魔法やファンタジーは転がっているから。山本直樹のすごいところは、出口の見えない毎日には、それでもこんなに晴れ渡った入り口がすぐ隣にあるんだと教えてくれるところだ。これまでに発表した幾多の短編の中から選び抜かれた秀作をひとつにまとめたこの一冊を読んで、改めてそう思った。定点アングルで描かれた“テレビばかり見てると馬鹿になる”は傑作。
10 人中、7人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
眼の前の出来事を逆さ望遠鏡を通して観察してるみたいな…,
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レビュー対象商品: 明日また電話するよ (コミック)
既発表の作品からの山本の自選短編集(作者自身の短いコメント付)で、初出年の一番古いのは「渚にて」(95)。ただし発表年順の配列ではなく、巻頭は「みはり塔」(97)、続いて「ぽつん」と「泳ぐ」(共に98)。作者は意味もなくこう並べたわけではないだろう。「みはり塔」は浪人生が離婚して帰郷した従姉とグッチャングッチャンになった後、2人で町の高台の展望台に行って町を見下ろすラスト。で、従姉が「あの窓の一つ一つの向こうにちゃんと一人ずつ暮らしているって、なんか不思議な感じだ」なんて呟く。山本作品では、「たかき屋にのぼりて見ればヨガリたる民の寝部屋は賑わいにけり」みたいな場面にしばしば出くわす。親密圏の核心とも言える、ほとんど動物のように没倫理な性愛への惑溺と、世界全体を俯瞰する高みからの視線の対比、と言っていいんじゃないか? 山本の別名が、森山塔だったワケだしね。 「ぽつん」は昔の巨大団地(高島平?)みたいのが舞台で、まあ発情した女子中学生どもがいたりするんだけど、上の「あの窓の一つ一つの向こうに…」って呟きは、この作品では変質者の存在が代補している。「泳ぐ」には浜の漁師小屋が出てきて、そこで少女はいかにもガサツそうな中年男の慰みものになっているのだが、これは浜の見張り場でもありそうな小屋の中で秘事が営まれているという、視る/視られる関係の折り返しが感じられる。 表題作については『フラグメンツ(4)』へのレビューで触れたが、あれは少し補足・訂正が必要かもしれない。でも、このカップルに明るい未来が待っているようには思えないんです、私には。
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