前書に比べて論旨の粗さが目立ちました。
例えば、冒頭で日本のソーシャルメディアの現状について、
「人口の6割がソーシャルメディアを利用している
アメリカの事例を出して比較することすらナンセンス」と述べながら、
後半、自身が開発に関わったSIPSという生活者消費行動モデル概念の
事例として挙げるのはベストバイやゲータレードなど海外のものばかりという矛盾。
また、マスメディアとソーシャルメディアの比較では、こんなふうに述べています。
>たとえば、ゴルフにまったく興味がない人がいるとする。
>いくらAI(たとえばテレビCM)で興味を惹こうとしても無理である。
>ただ、彼のソーシャルグラフの友人がゴルフにはまっていて、
>ゴルフの良さを毎日のように熱烈に語っていたら、
>彼もだんだん興味を持ちだすかもしれない。
ほんとうにそうでしょうか?
いくら友人がゴルフにはまっていようが、興味ないものは興味ない
という人のほうが多いのではないでしょうか。
筆者のマスメディアへのネガティブな先入観が透けて見えます。
さらに、ラジオとソーシャルメディアとは相性が良いと説明している箇所では、
筆者はラジオのメリットとしてこんなふうに述べています。
>また、ラジオにはDJ(パーソナリティ)がいる。
>彼らは聴いている生活者に親友のように語りかけ、
>生活者も親友からの言葉のようにそれを聴く。
>つまり、彼らの言葉は強い共感を纏っているのである。
>だから彼らのリコメンドはすごく効く。
>「今度の新製品、いいよね」とか語りかけると、
>それは聴いている人に強い影響を与えるのである。
「親友のように語りかける」とか「彼らのリコメンドはすごく効く」とか、
ラジオに幻想を持ちすぎているとしか思えない内容で、
冷静に現状のラジオメディアを分析しているとは言いがたいと思います。
その他、ソーシャルメディア時代の最も共感の得られる企業として
筆者が挙げるのがソーシャルメディア以前の時代から成功している企業の
Appleというのも、なんだか興ざめです。
本書全体の大まかな論旨も特段目新しいものではありませんし、
細部の粗雑さが目立つ内容でした。