音の空気感がとても澄んでいる。
柔らかい手触りと優しい声が高らかに響き渡る。
LOST IN TIME、2年ぶりのニュー・アルバム「明日が聞こえる」。
海北大輔の挑戦作であった「さぁ、旅を始めよう」を出してからのロストは
傍目から見ていても確実に不安定な状態だった。
かつてのギター榎本が抜けた時点からしてそうだったのだが
アルバムを出してすぐにメンバーの脱退が続き、活動も縮小されているみたいに見えた。
再び正式メンバーが二人になってしまったLOST IN TIME。
サポートメンバーとしてTHE YOUTHのギター三井が加入したものの、
かつてのデビュー盤「冬空と君の手」を出したときの状況と酷似している。
それに比例するようにして、サウンドの方も初期に戻っていった。
シングル「希望」からしてそうだったが、このアルバムに入っている「トライアングル」「鳥」を聴けば
一発で原点回帰の作品だと判った。 なんせ海北大輔の歌声からして元通りである。
サウンドもメロディも前作の力強さとは真逆の繊細で情感たっぷりのアンサンブルへと変化した。
ただ、あの作品を経たからこそ、この作品に辿り着いたのも事実であり
現にこのアルバムには「別れの歌」が多く、中でも「忘れもの」と「ブルーバード」は最たるものである。
一見恋人の歌にも聴こえるけど、よく歌詞を見てみれば色々な捕らえ方が出来る言葉選びになっている。
この数年の経験を反映させたような。
そして注目したいのが7曲目、「8月7日の夕焼けを君は見たか」。
これまでのロストでは有り得なかった直接的な表現に踏み切った曲であり、
バンドの演奏も、言葉の一つ一つも、とてもシリアスで緊張感に溢れている奥深い曲だ。このアルバムの中では一番ロックかな。
挑戦作の次に、原点回帰の作品ということで聴き手によってはネガティブな想像を巡らすかもしれない。
しかしこの作品で鳴らされている、限りなく聴き手に寄り添った優しいロックは
間違いなく自分に一番近いところで響く筈だし、側にいてくれる。そういうアルバムだと思った。
余談だが8曲目「静かな警報」の、
「出来るなら毛布からは出たくない 土曜日だけど僕は仕事だ」
というフレーズには超うなずきまくり。