事実上の株式会社立病院である麻生飯塚病院の「社長」の著書です。
最後に載っている「飯塚病院におけるTQM事例の紹介」を見ると、
多少、遅れたところで回収不能になるわけでもない書類を早く出す
にはどうすればいいか、などと、とても公立病院では考えもしないレベル
でのコスト削減に取り組んでいるようで、なるほど、こうやって一つの
病院の経営は改善していくのでしょう。
しかし、読了して疑問が無いわけではありません。
著者は、国立療養所を移譲され黒字体質に変えた話を挙げて国民の
負担を減らした、と言います。たしかに、人件費を削減したことは国民
負担の軽減に結びついたのでしょう。しかし、公的保険を使っての診療である
以上、医療機関の売上の増加については、
1 今まで使わなくて済んだお金を使った(結局は国民の負担が増えた)
2 他の病院に行くはずだった患者に来てもらった(他院の売上の減少)
のどちらかでしかないはずです。検証する方法などありませんが、
本当の意味で国民の負担を減らしたかどうかは、実のところ神様しか
分からないでしょう。
また、「商いは飽きない」なわけで、経営改善には不断の努力が必要
なのですが、そのためには強力なリーダーシップが必要(p.145)で、さらに医師の
意識改革や育成についても優れた指導医や目標となる中堅医師が必要(p.130)、
と言っていることも併せて、病院改革だなんだと言っても結局は人なのね、
と、当たり前なのですが実も蓋も無い結論になってしまっています。
通して見て、一つの病院の経営を改善させるためならある程度ヒントになる
ところもあるのでしょうが、飯塚ですらそうなんだ、という見方もできてしまう本です。