やられた!
これが本書を読んだ第1の感想であった。
本書は中央公論新書より刊行されている「旭日の鉄十字」シリーズの第4作である。
第1、第2巻においてオーストラリア独立戦争や日露戦争敗戦というアイデアに、ドイツ水上艦隊の日本海軍への全面譲渡という破天荒なシナリオを成立させた三木原氏の筆致は本作でも冴えわたる。
フランス沿岸での激闘を経てインド洋へ進出したドイツ水上艦隊に、進撃を続ける日本海軍の大艦隊が合流。
あの「大和」級戦艦2隻に加えて同じく最新鋭の「翔鶴」級空母2隻が参加する大艦隊は、ドイツから回航されてきた空母4隻、戦艦および巡洋戦艦4隻とともに最強といってもいい戦力を整えるに至った。
対する連合軍も、ハルゼー機動部隊をインド洋へ急派。
さらには画期的な航法システムロランCをもって、陸軍航空隊による洋上での大規模航空攻撃すら計画していた。
すわ、大海戦の幕開けかと思われる緊迫した状況下。
普通の架空戦記ならばここで大海戦の幕開けと相成るのであるが――本作は違う。
自由フランスという摩訶不思議な中立国を通じて燃料供給を意図的に制限し、自陣に引き込もうとする連合軍に対し、主人公たち枢軸軍がとったのは…「結婚式」。
詳細は省くが、唐突に現出した凪の中で、虚飾は暴かれ、そしてむき出しの人間性が軋む歴史のただ中にさらけ出された。
それは果たして大戦の狂気を振り払う一助になるのか?
と、こういった内容で、唐突ともいってもいいくらい突然にシリーズは終わる。
あっけない。
しかし、史実と、戦場における心理を巧みに絡み合わせながら戦記小説においてはタブーでもある、ある「批判」を成し遂げているのは特筆に値するだろう。
これもまた読んでみないと実感としては分からないと思う。
その点、勝利のカタルシスを求める人にとっては受け入れがたいかもしれないが。
最後に私的な感想を述べると、正直私は本書に少しばかり怒りを抱いた。
が、それだけでは終わらない。
恐らくは唐突なシリーズの終了である感情に突き動かされた三木原氏が好きに書いたのかもしれない(一例を挙げれば「死亡フラグ」や「御大」などを文中に登場させている。)が、その裏側にあるものを想像できるが上に、「聞き入れがたい正論」を織り交ぜた喜劇的な文章――
どろどろとしたマグマのようなものが滾っているようである。
私としては、筆者が意図していた通りに続編を出してほしいと思うことしきりであるが、またシリーズ名を改めて新発進するのかもしれず、そうなれば上記の愚考は笑い飛ばしていただければ幸いである。