日常的な野菜を使ったカレーのレシピ集。著者はインドカレーのスパイスと日本の食材の結婚と表現している。本格的なレシピをのせたカレー本をすでに何冊も出している著者だが、本書には、生(なま)のカレーリーフを入手せよといった特殊な指示はない。その点、本書のコンセプトは意表をつくものだった。
そのへんのごく普通のスーパーで手に入るスパイス数種を使うだけで、20−40分のうちに実に風味豊かなカレーが作れる。複雑な手順のものはない。四季ごとの旬の食材を組み合わせて作られた、どのカレーも、手順的にはむしろ、ある単純なパターンで成り立っているようだ。だから、本書にしたがってひとつひとつ作っていくうちに、慣れてくるとどれも簡単な気がしてくる。そしてこれこそが本書の狙いなのでは、と思えてきた。
多彩なカレーも、専門店で出される手のこんだカレーではなく、日常的に家庭で食されるカレーに関していえば、基本的手技は単純なものであり、あとは中に入れる食材をいろいろ変えて、何度も作ってみること。そうしているうちに、いつしか異国のスパイスを特別視する意識のかたさがぽろりととれて、味噌や醤油のように、なんの身構えもなく、スパイスを使いこなせるようになっているよ。本書を通じて著者にそう語りかけられているように感じた。こんなに肩のこらない、力みのない、カレー本は、なかったんじゃないかと思う。