今や巷は、「サブプライム本」で溢れかえっている。本書も所詮は、その類であろうとタカをくくっていた。一般的な「サブプライム本」が、「証券化」の技術的な解説に終始するか、もしくは、金融恐慌の恐ろしさを声高にかき立てるか、のいずれかであるのに対して、本書はそれらとは一線を画す。
もちろん、「お約束」として証券化の解説は付されているが、それが本書のウリではないのだろう。金融不況の背景となったカネの流れ、その中で金融機関のとってきた行動から、危機の原因を解き明かしている。「世界的なカネの流れ」というマクロの視点を持っているのは、類書にはない特長かもしれない。
目次に目を通したときには、各章のテーマが随分と散逸しているな、という印象が拭えなかった。しかし、全体を通して見ると、むしろ、金融危機のダイナミズムを際立たせる演出効果を生み出しているとさえ思われてくる。外資系金融機関という現場でしか味わえない、劇場で金融危機の進行を目の当たりにしているような臨場感が伝わってくる。
一般の読者にとって、金融危機がいかに身近なものであるか、という視点を強調しているのも見逃せない。日本の経済や金融機関、企業倒産への影響だけではなく、お金に困った外資系金融機関がいかに日本の個人マネーをアテにしているか。日本の個人投資家が金融危機に巻き込まれる可能性あり、という意味深な指摘にゾッとする人も多いだろう。
金融危機は現在進行中である。危機が晴れて終わりを迎えたときに、それを総括する続編を期待したくなった、というのが読了後の率直な感想である。