この本はアルメニア・アゼルバイジャンなどコーカサス地方の専門家である廣瀬女史の書いた、純然たる学問書である。
間違っても、下の方の言うように、この本を読んで平和についてなどというように、倫理的に考えるのは難しい。
つまり、この本の書く内容はタイトル通りの中身である。
つまり、地政学。
旧ソ連地域、とりわけコーカサス地域を中心とした、カスピ海の石油を巡る米露の競争や、
アゼルバイジャンとアルメニアの係争点となっているナゴルノ=カラバフという民族問題におけるロシアの関わり、
あるいはテロ対策機関としての名目を持ったコーカサス4やGUUAMといったロシア・アメリカお抱えの組織の勢力争い、
つまり米露の勢力争いなどが論じられている。
と言っても陰謀論のようなものを期待してはならない。
学術論文と認識して挑むべきである。確かに下の方の言うように、一つの国際機関というものを
「平和のための、偉〜い機関なんだ!」と認識していた方にとっては、
平和機関とされる組織が覇権主義に利用されている事は新鮮かもしれない。
しかし、それを知るために読むのであれば、おそらく本書は難解に過ぎるか、膨大な労力を要する。
又はコーカサスという地域研究からして、興味をそそらないだろう。
「正義の嘘」を知るならば、アメリカ覇権主義の嘘を描いた…
そう、ムーアか、難しくてもチョムスキーを読めば充分ではないだろうか。
この本の特徴はむしろ、コーカサス地方を研究対象にしている点にある。
ナゴルノ=カラバフ問題と聞いてピンと来る方は日本の中にどれだけいるのだろうか。
その分岐としては、古いところでは佐藤信夫氏の
「ソ連邦解体と民族問題」あるいは「ナゴルノ=カラバフ」を読んで知っているかどうかであろう。
本書では、著者はナゴルノカラバフそれ自体を研究対象としてはいない、としながらも、
その専門家の書物として、ナゴルノカラバフ最新事情を知るのにおそらく最良の書物である。
(西村めぐみさんがもう一冊書いているようであるが、残念ながらそれについては知識がない)