ポーランド人研究者による日露戦争の海戦本です。
VOl.1では仁川沖海戦、旅順港攻撃、そしてそれに続く包囲戦と黄海海戦がメインの内容です。vol.2は日本海海戦などが記述されると思われますが、本国でも未刊行なようですから、刊行までは時間がかかるかもしれません。
内容的には特に目新しいものはありませんが、海戦と陸上戦闘の関係を明記しているため、それぞれの海戦がどのような理由で生起したのかわかりやすく、ビジュアルが多いこともあり、入門者の人にも良い本と言えるでしょう。
この他に、本書で高く評価できるのは、各戦闘ごとに航跡図が掲載されていることでしょう。陸上作戦なら戦線や部隊の移動をあらわした戦況図が、海戦であれば、艦隊や航空機の移動をプロットした航跡図が、読者の理解を助けるために必要なのですが、最近の書籍では、面倒くさくコストがかかるからか適当に端折られることが多く、マイナーな戦闘まで網羅しようとしている本書の姿勢は嬉しいものがあります。
また読者によっては、各所の脚注も貴重な情報となるのではないかと思います。日本側文献の調査はかなり進んでいる日露戦争ですが、ロシア側文献や研究は一般的な日本人読者には縁が遠いので、こうした形でロシア側での研究を知ることが出来るのは有り難く、これを略すことなく残した翻訳者や出版社の方針をよしとしたいです。
奇をてらった内容ではないだけに地味な印象を受けるかもしれませんが、ブームに乗った安直な便乗本とは比較にならない丁寧なファクトファインドの試みがなされており、テーマに興味のある人にとっては、価値のある一冊です。
やや残念なのは、巻末の中途半端な艦型図(網羅性は高いのですが、側面図しかありません)や、本文のページレイアウトがやや洗練されていない印象を受けることで、これらの点を勘案して☆3つとしていますが、心情的には☆3.5以上という気持ちです。