日露戦争に関する書籍はいくつか読んではいたが、この本はよくある軍事史としての本というよりも日露戦争に至るまでの両国の政治状況に関する解説など日本側からだけでなくロシア側からの視点も加えて書いてあり、当時の国際関係・政治状況を踏まえて何故開戦に至ったのか、どのような決断がなされたのかという点に重点がおいてあり、一般にもきわめて理解しやすいという印象を得た。よくある日露戦争本では戦闘に焦点を置いているものが多く、開戦の経緯に関してもどちらかといえば一面的でややもすれば日本側からの視点からしか捉えてないものが多いが、この本では日露双方の視点を加えながら解説している点で違っている。
無論、研究者としてのバイアスがどこかでかかっている可能性はあるものの、きわめて冷静に客観的に描写しようという努力の跡が見られており、この戦争を理解することに大きく役立っている。戦闘に関する記述はどちらかといえば平易・簡潔で、もし軍事史として戦略・戦術など解説を期待する人には向かないとも思える。ただ、この戦争の全体を俯瞰するためにはとても良い本だ。