坂の上の雲の人気を狙ったこの手の本は多く、自分もそれらを片っ端から当たった口だが、意外にも坂の上の雲とは関係なく出版されたこの本が一番面白かった。
プロフィール、日露戦役時の役割、そして「その後」といった構成であるが、プロフィール、その後の部分に特に他の「坂の上の雲」関連本にはなかった、エピソードがちりばめられている。
桂太郎の脳が哲人カントと同じ重さだったこと、山本権兵衛と東郷平八郎が後年疎遠になったはこと、2.26事件で高橋是清が狙撃された理由、白襷隊・中村少将が意外な出世に世論の反発をうけたこと、野津道貫の最後を看取ったのはミス日本、ステッセルは実は人情家だった・・・など、面白エピソードに枚挙がない。
さらには、川原操子、石光真清、岡田啓介など、坂の上の雲には登場しないか、名前が出る程度だが、重要な役割を果たした人々も紹介されている。
特に、第5章「ポーツマス条約締結」では、坂の上の雲では語られなかった人々の奮戦と人柄がいきいきと描かれている。
平易で小気味よく、すらすら読めて、なおかつ面白い。
文庫本で、人物写真がないのだけが残念であるが、改訂版に期待したい。
とにかく、現時点、人物評伝ものとしては、もっとも優れた「坂の上の雲」関連本としてもおすすめできる。