一般の社史と違って、一般書として刊行された『日野自動車の100年』。
表紙をめくるとすぐに飛び込んでくるのは歴代エンブレムの一覧。バストラックからコンテッサ、コンマースのエンブレムまで、様々なウイングマークが並んでいて嬉しくなる。
工場拡張の歴史や業績の推移、役員の顔ぶれや福利厚生施設といった、いわゆる社史のテンプレート的な部分を一切割愛し、製品史と技術発達史に特化したところにこの本の特色が現れている。いろいろな社史を読んできたが、ビジュアル化もここまで来たか…と思わずにはいられない。
100年という節目の刊行だけあって「昭和○○年以前の歩みは前回発行した○○年史を参照されたい」というガッカリする展開も、もちろんない。
創業100年となるのは前身の東京瓦斯工業の創業からのカウントであり、ガスデン時代の貴重な写真がふんだんに紹介されているのが特筆すべきことだ。とくに情報の少なかった陸軍の非装甲軍用車の資料としては一級のものだろう。
戦前に世界記録を樹立した東大の航研機から、三井精機のオート三輪オリエント(販売は日野)、トヨタハイラックス(製造は日野)に至るまで、細大漏らすことなく紹介してあるのには、感心するほかない。
もちろん、読者の最大の関心であろう、トラックに関しても「ミケロッティデザインのトラックキャビン」、「北米で活躍したピートブロックのコンテッサと日野レンジャー」など、期待を遥かに超える内容であった。バスについては、車体メーカーの担当する領域が多いためか、ややあっさりした印象だ。
一気に最後のページに達してしまい、読み飛ばすようなページがなかったことを物足りなく感じてしまったのは、欲深さ故だろう。満足度の高い一冊。