「格差社会」「グローバリゼーション」「円高」「温暖化」「需要管理と生産性強化」「法人税と消費税」「中小企業金融」「中央銀行」「インフレターゲティング」「証券化とバブル」「失業」「財政赤字」「民営化」「道州制」「自由貿易」という15のテーマについて、日経新聞の記事を引用しながら解説し、かつ日経の記事にツッコミを入れながら考えていくという本。
「日経新聞を『正しく』読んで」というのは、「正しい日経の論旨を誤読せずに」という意味では全くない。まえがきで「たしかに、日本の新聞のなかでこれほどの経済情報を載せている新聞はほかにはない。しかし、読めば読むほど『本当に日経のいうとおりなのだろうか』という疑問も抱くようになった」と著者が言っているように、日経の記事をただ紹介するのではなくて、そこにある論理の矛盾、事実の見落とし、誤った思い込みの存在を指摘して、日経がつくり出す「経済世論」(これは世間的にはかなり強力だ)を批判的に眺め、正しく考える方法を示していくのが本書の目的だ。
「この本は、『これまで経済問題などあまり考えてみたことがなかった』という人に読んでもらうことを第一の目標にしている」とまえがきにあって、たしかに誰にでも分かりやすいように書いてはある。しかし、かといって単なる「経済ニュース入門」的な浅い内容というわけではない。むしろ、経済記事をよく読む習慣のある人が、「いろんな記事を読んだけど、いろんな見解があって結局何が正しいのかよく分からない」という状態に陥った時にこそ役に立つんじゃないだろうか。
著者の文章はいつも、問題となっている論点について代表的な見解をいくつか取り上げて比較しながら、「両論併記」には留まらずそれぞれを突き合わせて、議論の中から正しいと言えそうな「事実」と「論理」を抽出していくスタイルだ。解答の出しようのない問題についてはハッキリと「まだ誰にも分からない」と言ってくれるので、自分の頭をどの辺に落ちつけておけば良いかが分かって読者は非常に助かる。
だいたい1つの話題を12〜14ページぐらいで論じていて、巻末には用語集がついている。手軽だし、経済ネタに幅広くアンテナを張っておくという意味でも非常に役立つだろう。
また、著者の「情報整理法」もコラムとして15本掲載されていてとても面白い。
なお経済時事としては、この本のあとに、もう少し長めの文章でまとめられた著者の
日本経済の突破口(去年出た本だが)も併せて読んでおくと、議論が精緻化されて非常に参考になると思う。