外務省で中東、情報畑を歩んだ著者が防衛大教授退官を前に、なかなか辛辣に日本の外交政策の誤りを衝いた。著者の主張はきわめて明確だ。日米同盟は日本の基地提供=アメリカの日本防衛は十分等価であり、米軍に協調した自衛隊の海外派遣は不要、とする。
米国のイラク政策について、風習を理解しないことを現地滞在経験から批判的に論じるほか、米国は冷戦後、日本に敵視政策を取ったり、米国に都合のいいように日本政治をハンドリングしてきた(やや陰謀論めいた記述だが)ことを指摘するが、最も蒙を啓かれたのは、日米の北朝鮮政策を論じた章だ。日本は米国に独自の抑止力を持たせてもらえないが、米国の対北政策は一貫せず、日本は米国に追随するだけでは北から守られない可能性もある。ゆえに外交は独自の路線を取り、北朝鮮に関してはグローバル経済圏に取り込み、相互依存の関係にすることが最善というものだ。
また、最終兵器といえる核戦略について、国際政治の世界で非常に高度な議論が展開されていることを知った。いわゆる「核の傘」について、米本土の攻撃でなければ、核を打ち返す価値はないとするキッシンジャーの論を紹介し、「核の傘」とは実は相手がそう思うか否かにすぎないあいまいなものであることを指摘する。
巻末の参考図書の紹介もただ紹介するのではなく、著者の一言コメントがついていて、親切でもある。外交安全保障両面で高度な議論が展開され、面白かった。