「また殺し屋の話ですか、勘弁して下さいよ、殺し屋なんて実際に居やしないんだから・・・」
画面に向かって語りかける男。「殺し屋」を題材にした映画なのに、いきなりそれを否定する・・・こんな風に始まるのが本作『紅の拳銃』だ。
1年そこそこの映画キャリアで、数々の活劇映画を残すも、若くして事故で逝ってしまった赤木圭一郎の遺作でもある。
いまや日活アクションを代表する伝説的作品といえば、鈴木清順監督の『殺しの烙印』である。しかし、この作品が再評価されたのは'90年代、「シブヤ系」のブームなどがきっかけだった。'80年代は、忘れられていた映画だったのである。
そして、その'80年代、テレビで放送される『ダーティーハリー』の画面にかじりつき、望月三起也の傑作漫画『ワイルド7』『優しい鷲JJ』を夢中になってむさぼり読んだアクションもの大好きの少年たちの間で「一度観てぇ・・・!」と囁かれていた伝説の和製活劇映画・・・それが本作『紅の拳銃』なのだ。
ボスから「殺し屋を」探すよう頼まれた、元凄腕ガンマンの石岡(垂水悟郎)。彼はかつて、自分が手塩にかけて育てた「殺し屋」を死なせてしまった事を悔やみつづけていた。そしてバーで、一人の若者を見初める。世をすねたような若者・中田(赤木圭一郎)。こいつなら、仕事をしくじって「死んで」しまってもかまわない・・・。石岡に巧みに誘われ、中田の「拳銃修行」が始まる。しかし、中田には秘めた過去があった・・・。
この映画が「伝説」だったのは、ガンマニアの少年たちの心をくすぐる、マニアックなセリフや描写が満載だったからだ。
「オートマチックは、万一不発があってツッコミ(ジャム)を起こすと弾が詰まっちまう。そこへいくとこの回転式(リボルバー)は不発があっても、もう一度引き金を引きさえすれば、ちゃんと次の弾が回って撃ち続けられる」
「ワルサーP38。ヒットラーが自殺した時に使った銃だ」
いまどきのガンマニア君にしてみれば、別段マニアックなセリフ・・・どころか陳腐に聞こえてしまうかもしれないが、この映画が製作された年を考えてみてほしい。1961年である。『ルパン三世』のファーストシリーズが放送されたのが1971年。当時、アニメの中でいいかげんだった銃の描写をリアルに描いて(ちゃんとブローバック・排莢するなど)注目されたのがアニメの『ルパン三世』だ。その10年も前・・・一体この時代に、拳銃のうんちくやガンプレイにこだわるような観客がどれほどいただろうか?
相手に拳銃を渡すと見せて、瞬時に持ち替えて反撃するトリックプレイや、絶体絶命の状況で石岡が義手に仕込んだ予備の銃を中田に投げ渡し、一瞬で反撃に転じる砂丘の対決シーンなど、ニクイ見せ場も要チェック。
主人公が託されるのは、必殺の「コルト45」と呼ばれる銃だ。色々偉そうに書き立てておいて、実はガンマニアというほどでもない筆者は、この拳銃の種類を特定できない(泣)。形状的には、「コルト・コブラ」と呼ばれる戦後のモデルに似ているように見えるが、コブラは38口径。話によれば、日活が勝手にでっちあげた「日活コルト」というのがあるらしいが、これもそうなのだろうか?知ってる人がいたら教えて!
拳銃の師弟もの、というとマカロニウェスタンの『怒りの荒野』('67)が有名だが、本作はそれよりもずっと早い。「伝説」だったのは伊達じゃないのである。
まあ、時代が時代なので、盲目の美少女に恋をして・・・とかメロドラマな展開、娯楽映画としてのお約束を踏み外さない手堅さ、などやっぱり昔の活動シャシンだなぁ・・・とほほえましく思ってしまう部分も多々あるが、そんなレトロな感覚の中に、マニアックな拳銃うんちく&ガンプレイを楽しめる『紅の拳銃』。日本の娯楽映画も、けっこうあなどれませんよ。