前巻にあたる「高射砲」で全体説明は済ませたいうことのなのでしょう。この巻では巻頭から個別の火砲ごとに諸元とエピソードを綴るカタログ式の記述になります。したがって陸軍火砲に関する用語や全般的な知識のない方は、筆者の既刊本や他の入門書などとあわせて読まれた方がいいかもしれません。
読み物調火砲カタログと言った体の本ですが、それだけに写真、図版は充実しており、この分野に興味のある人には非常に見応えのある内容なのは、前巻と同様です。 内容的に迫撃砲、噴進砲、船舶搭載砲、列車砲という括りはやや雑多ですが、ボリューム等を考えればやむを得ないところではあるのでしょう。
もっとも日露戦争下、現地製造の急造兵器として始まった迫撃砲の歴史や、出版物にまとまったことの少ない陸軍の噴進砲や列車砲など、読み物としてみればバラエティに富んでいるとも言えますから、この点は人によって評価の分かれるところかもしれません。
個人的には「船載火砲」で、火砲とその解説もさることながら、写真や図に搭載船艇が写りこんでいたりするのが興味深かったです。五式木製大護衛艇の船上写真や大発動艇(大発とは別の艇、紛らわしいですが)上の三七ミリ砲とか、五式砲撃艇の射角付与機などは陸軍舟艇や軍用小舟艇に興味のある人にも貴重な情報のはずです。
また、噴進砲の概説部分に「火砲の2倍の火薬を」必要とするロケット砲は「綿の資源のないわが国としては、火砲用発射薬と競合」するという問題点が、さらっと明記されている部分、また噴進砲が注目されるのは戦争の進行に伴う鉄不足で普通形式の火砲生産の限界が認識されことによるという説明もなども、日本陸軍とロケット砲の関係を考える時に注目すべきポイントを教えてくれているように思います。
丁寧に読めば、本文や写真からいろいろなことを発見出来る本だと思いますが、そのためには読み手にある程度の知識が必要かもしれません。もちろん、珍しい写真や図版を楽しむだけでも十分ではあり、ここでは☆五つの評価としています。