タイトルのままに、特攻用航空機と飛行爆弾のみで編まれた一冊です。
翻訳本ですが、オリジナルの本で初出となった貴重な写真に加え、日本語版ではさらにキ-115乙関係の資料等も追加されており、日本語版独自の付加価値があります。 また収録された機材には三面図が付され、外形を明らかにすると同時にモデラーにもアピールしているように思います。また巻末にはカラーイラストも掲載されていますが、桜花の各部色の相違のように興味深い着眼もある一方で、キ-102乙のカウリング塗装など疑問を感じる考証もあります。
本文、図ともに精度は機種によって様々ですが、これは残された資料の質、量に差があるのでやむを得ないでしょう。 風船爆弾や噴龍、桜花など、個別の兵器に焦点あてた著作があらわされたものについてはともかく、ケ号自動吸着爆弾や特攻グライダー神龍などは、雑誌記事などはともかく、一冊の本にまとまったことが無かった兵器の全体像が刊行物にまとめられたことは非常な成果と言えます。
内容的に重箱のスミをつつけば、第一章の特攻概史で、航空特攻の開始を大西の現地における着眼に依拠するように読めるような記述があるなど、気になる点もありますし、彗星43型が独立した項目を与えられて紹介されているのに対し、同じように既存航空機の特攻対応として誕生し、それなりの数が特攻に投入された零戦62/63型や紫電マルJ(こちらは実用化してませんが)等がスルーされていることにも疑問が残ります。
また彗星の夜戦型が丙型になってますが、これは一般的には戊型とされおり、訳の段階な何で生じたケアレスミスでなければ根拠を知りたいところです。翻訳に由来する表記問題としては、橘花のバリエーションを「橘花5」とか書いてるのも、何となく意味はわかります(第五案や五型といったニュアンスの原資料の表記を外語化し、さらに日本語に翻訳する過程で生じたのでしょう)が違和感が残ります。
このように意地悪く見れば細かな疑問点はありますが、丹念な資料収集と調査に裏付けられた労作のように思え、興味のある人には、お勧めの一冊と言えるでしょう。