日本酒をテーマとした本は世の中にあふれている中、あえてこの本を推す理由は、日本酒を科学的に正確に伝えようとする著者の情熱が伝わってくることにある。
そのように書くと、難解な印象を受けるかもしれない。確かに、専門的な内容を多く含むため、読んですぐに理解できない部分もあるかもしれない。だが、文章は読みやすいし、とにかく「多くの人の共感を呼び起こしたい」という著者の思い入れがわかるだけに、何回か読み返して読み解こうという気になる。
何より、書かれている内容が面白い。杜氏たちは、殺菌もせずに酵母の純粋培養状態を実現し、パスツールの何百年も前に火入れによって品質を保持する技術を開発し、糖発酵とアルコール発酵を同時に進める驚異の技をあみだし、世界でも屈指の高アルコール度の醸造酒をつくった。日本酒にはどんな歴史があるのだろう、誰がいつごろ日本酒の製法を改良してきたのだろう。興味は尽きない。
秋の夜長に、おいしい日本酒をいただきながら読むのに最適の1冊。