芸術論、美術批評本によく有りがちな年譜、事象、人名の羅列のみの
味気の無い本とは違い、高階秀爾の豊かな見識と一人一人の画家達が
激動の明治期に、洋行した者、しない者関わりなく、いかに西洋と対比し
生き抜き芸術に落とし込んだかが感じられる著作である。
特に黒田清輝や岸田劉生という日本洋画界をリードした人達に対し、手離しで評価するのではなく、
歴史上の意義とそれぞれ役割を詳やかにしたうえで、どこまで彼らが到達でき、さらに今後の洋画界に
必要とされる潮流は何かを想像させる内容となっている。
現在、ブリジストン美術館で、青木繁展をやっているが、この短命天才の画家に関しても、
黒田清輝との性質上の違い絵画上にどう表れているかを見てとれた。近代美術の導き本としては最適である。
一人の画家と比べ、歴史上の文化的背景と結びつけ、更に個としてその画家が何を描きたかったか、
何に到達したかが重要となる。
洋画のみならず、日本画も同時期比較し、歴史も鳥瞰出来る美術歴史本としてお勧めである。