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日本近代文学の名作 (新潮文庫)
 
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日本近代文学の名作 (新潮文庫) [文庫]

吉本 隆明
5つ星のうち 4.2  レビューをすべて見る (9件のカスタマーレビュー)
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   吉本隆明はめったに全国紙に書かない作家だが、毎日新聞の文化面で週1回連載した「吉本隆明が読む 近代日本の名作」(2000年4月~2001年3月)をまとめた本。タイトルが「日本近代文学の名作」に変わっているところに、まず興味をひかれた。文学は、いつの時点で近代から現代へ移行するのか。そんな基本的疑問に答えてくれそうな改題だ、と思ったのである。

   取り上げられている作家は、昭和の太宰治から、明治の夏目漱石にさかのぼる24人。この選択からすれば、太宰までが「近代文学」ということになる。冒頭、吉本は「親疎の感じがまだ生々しくて公正を期することができない作家」は落とし、「太宰治から逆に折り返すことになった」と断わっているが、そのあたりに、吉本の時代区分の基準がありそうだ。

   たとえば、本書で論じている作家以外の小川国夫や、島尾敏雄のことは「小川さん」、「島尾さん」と「さん」付けで語っている。生存している作家には、ある種の「おもんばかり」が働くのだろう。吉本が大新聞に書かない理由も、文芸評論家が巨大メディアを通じて、他者を批判するのは公正ではない、という「おもんばかり」なのかもしれない。江戸川乱歩の「陰獣」と、吉川英治の「宮本武蔵」を取り上げているのも興味深い。「宮本武蔵」は純文学にない物語性を持った本格小説として、「陰獣」は大正デモクラシーのイメージを象徴する作品として評価するのである。

   評論全体に感じられるのは、作家の倫理性を透視する、吉本の強い目線である。漱石の過剰で本格的な倫理性、武家社会の義理と倫理に対する森鴎外の関心、横光利一の古風な資質からくる倫理、高村光太郎のデカダンなわが身への自嘲、宮沢賢治の普遍的宗教観、岡本かの子の仏教者としての性意識、といった倫理性を近代文学の特性として摘出している。文学における「現代」は、そうした古風な倫理性が消えるところから始まる、ということかもしれない。(伊藤延司) --このテキストは、 単行本 版に関連付けられています。

内容(「BOOK」データベースより)

漱石は『こころ』のなかに江戸と西欧、二つに分裂した倫理観の危機を刻み、川端は『雪国』で、混じり合う男女の性を「浸透力」と捉えた―。明治から昭和までの代表的文学者24人の作品から、「名作」に値する特異な要件を抽出し、近代精神が孕む諸問題を解き明かした傑作論考。独自の着眼と作品への懐深い洞察で、文学の本質を鮮やかに射抜く、吉本文学論の精髄である。

登録情報

  • 文庫: 213ページ
  • 出版社: 新潮社 (2008/6/30)
  • ISBN-10: 4101289239
  • ISBN-13: 978-4101289236
  • 発売日: 2008/6/30
  • 商品の寸法: 15.2 x 11 x 0.6 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.2  レビューをすべて見る (9件のカスタマーレビュー)
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16 人中、14人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:文庫
日本の近代文学について、作家ごとにコンパクトに、しかも鋭くまとめられている。
吉本さんは、目もあまり見えなくなり、足腰もかなり厳しいが、アタマの中は相変わらずすばらしい。いや、肉体的な衰えが逆に精神に反作用しているのかもしれない。

内容から一人、宮沢賢治を紹介しよう。彼が国柱会に所属し熱烈な日蓮主義者だったことが取り上げられ、にもかかわらず作品は宗教的なプロパガンダになっていない。その意味ではプロレタリア文学が政治的プロパガンダになっていることと比べて、賢治のすばらしさであると書いている。
然り、である。
作家の写真も載っているのだが、印象的だったのが川端が映画「伊豆の踊り子」のロケ中に吉永小百合を遠くから見ている感じの写真だ。自死した川端のことを思うと、なんとなく、とどかない「美」にあこがれている感じがした。
吉本さんの長文はかなり難解だが、語りおろしで、かつ短いので、要点がピシッと決まっている。これを機会に、もう一度各作家の作品にあたってみたくなった。
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9 人中、8人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By 古本屋A トップ1000レビュアー
形式:単行本
一度は聞いたり読んだりしたことのある作家の代表的な、余りに代表的な著作を選んで、その作品と作家のツボをみごとえがく。ずば抜けた力量と年季の賜物で、語り書きからくる、文章の平板さが、最初著者らしからぬので、抵抗が僅かにあるが、青少年が読んでも、大人が読んでも良い配慮になっているとも云える。選ばれた作品は、しかし、私にとっては、この作家ならほかのものを選んで論じて欲しかった、と思うものもあったりで、また、そう思わせる主題は、私には、本書の中では面白いほうではなかった。漱石なら「こころ」ではなく、「道草」か「明暗」を、鴎外なら「高瀬舟」ではなく、「史伝」か現代ものの短編が、やってほしかった。しかし、芥川の「玄鶴山房」は、本書中傑作で、随分遠い昔に読んだこの作品に自分をもう一度再読させてくれた。本当に立派な作家だと思い、多くの頭でっかちな批評家に長らく不当に軽んじられたことが、本当におかしいと思い直した。ほかでは、花袋、安吾、谷崎は、我が意を得たりと思わせてくれた。一方、上手く書けていても、賢治の「銀河鉄道」のように、自分が馴染めない作品については、むしろ、吉本のこの紹介のほうが素晴らしく思え、そんなに素晴らしかったかな、と思って原典に当たると、肌合いが合わず、がっかりする、ということもあった。いろいろ楽しい本だと思う。決して解釈を押し付けず、どこか開いている語り口ながら、それでいて、「ほら」と作品を指差したその方向に、「どれどれ」と見に行きたくなる魅力があった。本書を、皆で読んで、扱われている作品も読んで、老若男女、話に花が咲くと思う。
このレビューは参考になりましたか?
4 人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By Y.N
形式:文庫
僕より50才以上年上の吉本さん。大好きです。

いろいろな本を読んで自分なりに考えている時でも、ふと吉本隆明ならどう考えるだろう?
と思うことがよくあります。そんな自分にとって本書は興味深い作品でした。

とくに、芥川の章の最後、「下町の悪ガキがどういう文章を書けばいいのか、というのは
わたしたちにとっても重要な課題だった。わたしたちはリアリズムで下町を描くという方法は
とらなかった。かといって、芥川もいや、堀辰雄もいや、立原道造もいやだった。これらのだれとも
似てはダメだと思った。」という箇所が吉本さんらしいというか、とても印象に残りました。
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最近のカスタマーレビュー
近代文学入門に最適
著名な24作家の代表作について吉本隆明が鋭い洞察を加えながら解説しています。吉本はこれら作家のことを本当によく研究したのだなということがわかりますし、しかし内容は... 続きを読む
投稿日: 7か月前 投稿者: 古本買取 京都 かもがわ書店
面白う
「こころ」ほか正統派解釈とは
ちがった面白さ
吉本風健在
投稿日: 2010/3/1 投稿者: むっしゅう
ざっくりした語り口
よいですね。

言葉を言い切ることに情熱を注いでいる吉本さんもよいですが、こんなかんじのざっくりした文章も好きです。... 続きを読む
投稿日: 2009/7/8 投稿者: 猫だるま
この間、単行本だったのに・・もう
すぐ文庫本になった。本の装丁は、単行本の時が優れていると思う。「近代文学」らしくない、今度の装丁は。内容は、再度読んでみると、面白いし、もう一度昔読んだものを再読... 続きを読む
投稿日: 2008/11/19 投稿者: 古本屋A
最良の読書入門
多くの読書論、読書術の類が出回っているが、いずれも読書を直接的に自らの出世やサバイバルの手段の一環として役立てようとするものだ。... 続きを読む
投稿日: 2008/7/20 投稿者: 野火止林太郎
日本近代文学入門
「現代日本の詩歌」と同じく新聞連載の単行本化。著者が重要と思う作家と主要著作について触れている。ここから各論として著者の他の文芸評論へと渡りをつけることができる。... 続きを読む
投稿日: 2003/5/27 投稿者: amazon
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