明治以降の日本の学問が、内に向かっては「国民」創出、外に向かっては帝国主義的拡大に、いかに奉仕していたか。最初の三部は、こうした問題意識が貫通しており、サイード『文化と帝国主義』の近代日本版と言えなくもない。ただ丸山真男の「超国家主義の論理と心理」を分析した第三部第二章だけは、やや色合いを異にして、戦後日本の「近代」概念の起点が問題にされており、上の意識は背景に退いている。
第四部はやや異なって、一言で言えば戦後における「戦争の記憶」をめぐる知的攻防を描いたもの。(だが第三章は再び戦前に戻り、竹越与三郎と北一輝による「維新」の語りに焦点が当てられる)
全体として読み応えはあるものの、たまに議論の流れが途切れる。著者なりの論理展開なのだろうが、読むほうにしてみれば少し突飛な印象を受ける。
あともう一つ気になったのは、第三部第一章、とくに京都学派と竹内好についての議論、丸山論を除いて酒井直樹氏の論文に酷似しているが、いいのだろうか?
(Naoki Sakai, Modernity and Its Critiques: The Problem of Universalism and Particularism, Masao Miyoshi, H.D. Harootunian(ed),Postmodernism and Japan(1989)所収。)
一応著者は、酒井氏の別の日本語論文を挙げてはいるが。(題名からして上の論文の日本語版だろうが、私自身は読んでいない)