本書は、戦争に対する一切の善悪論や感情論を排除し、戦争という勝負事の成功
要因と失敗要因を冷静に分析します。この点で他の戦争論の書籍と一線を画します。
総論としては、陸軍・海軍、さらに各個別部隊単位で各々が個別最適を目指した結果、
日本軍は全体としての整合性を失い敗北へと繋がった著者はいいます。
本書には成功を含みつつも、多くの失敗事例が紹介されます。失敗事例としては、
・日本陸軍は、指揮官・将校・兵士が馴染む間も無く、度を越えて編成を変え、組織
のモチベーションを低下させてしまった。
・軍の参謀が上官に勝つ見込みが無いと冷静に意見具申をすると、 激戦地に左遷
されると云われていた。 このため戦況が絶望的でっても、現実にそぐわない威勢
の良い命令を出し続ける参謀のみが中央に残り続けるという異常事態を招いた。
・相手に見あぶられた作戦を使いつづけ、戦力を浪費させてしまった。すなわち、失
敗から学ぶという謙虚な姿勢が弱かった。
・戦争に反対する英米留学組より、三国同盟や対米開戦を強硬に主張したドイツ留
学組が、多数波勢力を占め、彼らの意見が主流になっていった。
・ハルノートによって無理難題を突き付けられた日本の苦しい立場を国際社会に訴
える外交努力をなしに、開戦に踏み切ってしまった。
などなど、数々の事例が豊富に紹介されています。
古今東西を問わず、ある程度の規模の組織では、その各部門の最適化(求心力)
に向けた動きから、各々の部門間の対立が大なり小なり生じます。本来、外部に向か
うべきエネルギーが、内部で消費してしまうのは、多大な損失です。この打破には、組
織の向かうべき方向を提示する的確な戦略と、健全な組織とが両輪となって噛み合う
事が重要だと感じました。成功・失敗の分水嶺のヒントとして、本書は組織論、参謀論、
リーダー論を含んだ示唆に富む一冊です。