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5つ星のうち 5.0
日本的資本主義は果たして本当に資本主義と呼べるのか。,
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レビュー対象商品: 日本資本主義の精神 (B選書) (単行本)
日本の社会を動かす見えざる原則とは何か?日本の社会は本当に資本主義といえるのだろうか?世界の何処にでもあって日本にだけないもの、それは契約を基礎としたところの宗教乃至は規範、そして血縁だという。日本は漠然と血縁社会だとばかり思っていた私には意外な思いがした。日本では機能集団がすぐに共同体に転化し一種の強固な擬制の血縁集団と化してしまう。西欧でも共同体維持のため犠牲はもちろん払う。ただし西欧では機能集団と共同体がはっきりと分化している。事例はいささか古いが、国鉄は運送業であり、そのすべてが輸送のために機能している筈である。ところが現実には国鉄一家という共同体を維持するために機能し、輸送という本来の機能は、手段と化している。日本の敗戦の最大の要因は、軍部(軍隊一家)というべき共同体の要請がすべてに優先し、国民はその要請に対応すべき存在とされてしまったことである。軍共同体維持のため、機能集団たる軍隊が機能するという状態である。 日本では資本主義の論理は藩の中で醸成されてきたという。藩という機能集団兼共同体の中に現在の日本企業の原型を見ることが出来る。鈴木正三の宗教的労働観に始まる「私欲なき経済的合理性の追求とそれに基づく労働」が現代にも脈々と受け続がれている。 日本の社会構造に対応する日本人の精神構造の本質を山本七平が見事に説き明かす。日本の伝統に基づく資本主義の精神を再把握する、ゾクゾクするほど面白い本。
4 人中、3人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
日本的資本主義の特徴とその成立,
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レビュー対象商品: 日本資本主義の精神 (B選書) (単行本)
山本七平氏の著書は以前「人望の研究」を読んだときにも非常に深いなーと感服したのですが、今回も論旨が明快で考察が深く非常に良かったです。この本のテーマは簡単に言えば、日本的資本主義の特徴とその成立に対する考察といった感じでしょうか。まず、日本的資本主義というか日本人社会の特徴として、機能集団イコール擬似的な血縁関係のような共同体を形成するという特異性を指摘。これは江戸時代以来の日本の伝統だそうです。江戸時代は、室町末期から戦国時代の戦乱がやっと終結して、文化・思想・経済が大発展していく時代です。(戦を抑える目的で戦争技術だけは発展しませんでした) 明治維新や昭和の戦後のように、革命的に体制が代わると、それ以前の歴史を否定し、歴史の長所を封印するのはよく行なわれることですが、非常に勿体ないことです。また勿体ないだけでなく、人間はそれ以前の歴史的伝統や思想を土台にして生きているため、行動や思考の原典や根拠が不明確になってしまうという、重大な欠点があります。実際、現代の日本人のほとんどは、戦前の歴史を正しく教えてもらっていないため、何故日本人がこれほど優秀なのかが分かっていないようです。 さて、山本氏は日本的資本主義の源流として、江戸時代前期と後期の思想家を上げています。 禅宗であった江戸前期の思想家の説から、士農工商の四民の業はそれぞれ即ち仏業であるとして、官業も農業も工業も商業も利得を目指さず、ただ世のため人のためと業を行なうことは尊い行いで、結果としての利潤はこれを否定しない、という立場です。商業とは自由を為さしめるための重要な行いであり行商は巡礼なのだそうです。そうしてみると日本的エコノミックアニマルのワーカホリックな仕事も、禅の思想と根本が同じいうことです。日本人なら感覚的にイミが分かると思いますが、外国人には理解不能でしょう。 日本的資本主義は、機能集団=共同体、仕事=仏業という点で、世の為人の為仲間と共同体の為、無私の精神で働きまくる一面で非常にうまく機能しますが、同時に欠点も抱えています。その欠点とは、機能集団=共同体であるが故に、仲間を簡単に切れず、ドライになりきれないため、非生産的になり易いことです。 そのため山本氏は、日本の社会は常に倒産が必要な社会だと指摘します。共同体の保護のために機能性が弱くなり非生産的になりすぎたとき、機能集団は倒産せざるを得なくなるからです。現在の農業や、超赤字の地方自治体など官業も、下手に保護などせずに一度倒産させないと、本来の意味での再生は出来ないのかもしれません。 もうひとつの問題点は、仕事=仏業であるため、日本人は働かないでぶらぶらすることを極端に嫌います。これは外国人には信じられないことでしょう。ここから一つの問題点が出てきます。「ニンベンの有無」がそれです。組織として、働かないでただ動いているだけの余剰人員をどうするか、という問題に繋がってくるのです。これに対する答えの一つとして、「ニンベンの有無」と喝破したトヨタの大野耐一副社長の提唱したカンバン方式が出てくるのです。 この本では、資本の論理に則って経済改革を断行した、江戸時代の有能官僚としての藩主(藩民主主義)なども紹介しています。そして十分に経験を積んだそれらの藩があったらか、最悪な状態だった明治維新がなんとか成功したのだろう、と考察しています。
12 人中、8人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
見事な日本的資本主義の分析,
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レビュー対象商品: 日本資本主義の精神 (B選書) (単行本)
山本七平氏の日本に関する著作は、氏の軍隊経験に基づいて日本的システムの短所を指摘しているものがほとんどである。しかし短所を裏返せば長所になるわけで、本書は氏の著作としては珍しく?、日本的システムを肯定的に捉えている。確かに、無謀な戦争を始めて敗戦に至ったのも日本的システムによるものであるが、明治維新や敗戦後の混乱期を見事に乗り切ったのも日本的システム、本書で言うところの「日本資本主義の精神(日本資本主義の論理と倫理)」である。 日本的な資本主義は日本人の無意識的な思考・行動の上に成り立っているので、それを客観的に捉えることは非常に難しい作業のはずであるが、氏は見事にそれを成し遂げている。本書の初刊本は昭和54年発行であるにも関わらず、その内容は今でも全く色褪せていない。
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