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日本語は亡びない (ちくま新書)
 
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日本語は亡びない (ちくま新書) [新書]

金谷 武洋
5つ星のうち 4.2  レビューをすべて見る (17件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

昨今、日本語の存亡を憂う言説で溢れている。しかし、本当に日本語は亡びるのか?外国語としての日本語は活気に溢れ、学習者は約三〇〇万人に及ぶほど、未曾有の日本語人気に沸いている。インターネット時代の英語の圧倒的優位が叫ばれているが、庶民の間では現在も将来も、日本人の生活語は日本語だけに留まるであろう。庶民に支えられている日本語を見つめることから、大胆かつ繊細に、日本語の底力を徹底的に解明する。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

金谷 武洋
1951年北海道生まれ。函館ラサール高校から東京大学教養学部卒業。ラヴァル大学で修士号(言語学)。モントリオール大学で博士号(言語学)取得。専門は類型論、日本語教育。カナダ放送協会国際局などを経て、現在、モントリオール大学東アジア研究所日本語科科長。カナダでの20年にわたる日本語教師の経験から、日本語の学校文法が、いかに誤謬に満ちているかを訴え、新しい日本語文法の構築を提唱している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

登録情報

  • 新書: 190ページ
  • 出版社: 筑摩書房 (2010/3/10)
  • ISBN-10: 4480065407
  • ISBN-13: 978-4480065407
  • 発売日: 2010/3/10
  • 商品の寸法: 17.2 x 10.8 x 1.6 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.2  レビューをすべて見る (17件のカスタマーレビュー)
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By 左党犬 トップ500レビュアー
形式:新書
 2002年に出版された『日本語に主語はいらない』(講談社メチエ)を読んだとき、よくぞ言っていただいたと感謝したくなったことを覚えている。
 本書は、具体的にはバイリンガルの日本人作家・水村美苗の『日本語が亡びるとき』(筑摩書房、2008)への反論を意図して執筆したと、著者は「はじめに」で述べている。私自身、水村美苗の本を読んだとき非常に強い違和感を覚えたので、またとない援軍が現れたものだと思って、著者の「蛮勇」には大いに期待して本書を手に取った。

 ざっと読んでみての感想は、「満足半分」に「期待はずれ半分」である。
 「満足半分」というのは、著者の専門である、カナダ人への日本語教育実践から発見した日本語の特性から、日本語はけっして亡びないことを論証していることだ。これについては大筋で賛成である。著者の理論が正しいか正しくないかは、言語学の専門家どうしで論戦しあえばいい。
 「期待はずれ半分」といったのは、本の半分が本論とはあまり関係ない、宮部みゆきと中島みゆきの話で占められているからだ。しかも、言語学的な分析ではなく、このふたりの「みゆき」が表現する日本人の心性について語っているだけであって、だから「日本語は亡びない」という論旨とは、結びつきが弱すぎるのである。

 結論としては、水村美苗の『日本語が亡びるとき』への違和感を表明した本とはなっているが、分量を半分にして、言語社会学的な話で残り半分を書くべきではなかったのか、というのが私の感想である。
 とまあ、ここまで辛口の評価をしてきたが、水村美苗の『日本語が亡びるとき』への反論がでてきたことは、たいへん喜ばしい。著者がふと漏らしているように、水村美苗には12歳の時に、自分の意思ではなく有無をいわさず米国に連れて行かれたときに経験したトラウマがあるのだろう。
 日本語を実用的に使っているのは、ごくごく少数のインテリ作家だけでなく、圧倒的多数の一般ピープルだからだ。どう考えても、日常生活で英語を使うとはとてもは思えない圧倒的な日本人にとって、「日本語が亡びる」などという危機意識は、はっきりいって無縁の発想だろう。

 ほんとうに亡びる可能性が高いのは、話者が激減している、いわゆる「危機言語」である。人口が減少しているといっても、1億人を切るのにいったい何年かかるというのだ。日本語が「危機言語」であるかどうかは、この本がある程度まで解答している。
 興味のある人は、半分は読むに値するので、目を通したらいいとはいっておこう。

 
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10 人中、8人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By yukiko
形式:新書
亡びる亡びない、という論点は偽の論点だ。水村氏の労作が額にしわ寄せた日本語で書かれ、金谷氏の反論が隅々まで喜びに溢れた生きた言葉(それが表音文字言語であろうと表意文字言語であろうと何の違いがあるだろう)で書かれていることが、とりもなおさず、現代の日本語および日本文学が立たされている岐路を明確に示しているとは言えないだろうか。

水村氏の典拠は漱石である。漱石だけである。彼女は漱石という大きな権威のもとに、大学教育によって存続させるべき伝統(不思議なことに、彼女の伝統概念は欧州の構造主義者の一部のものと酷似している)として文学を見ている。その視点にたてば、なるほど谷崎も幸田文も紫式部も同列であろう。しかし、彼女は文学が翻訳不可能な知的倫理的美学的体系であると言っている。では、これほど違った文体の作者たちを「伝統」にくくってしまうことは間違っていないだろうか。文学者としては間違っているのだが、おそらく政治的な論説家としては当然のことなのかもしれない。

こうした政治的展望を持つ文学批評家、または文学史と称する制度史の研究者にとって、金谷氏のやり方が天衣無縫、もしくは無謀とすら思われることは致し方ない。しかし、彼のやり方は文学的に正統的なのである。彼は、亡びる亡びないと問う以前に日本語文法の具体例を解析し、そして、長々と文学作品の一部を引用している。これらの引用は、日本語の生命力を証明するにあたって、百万の理論に代わるものである。

一方で、水村氏の主張である文学=制度という議論はさて置くにしても、一体文学作品が後世まで受け継がれるのは、何の力によってだろうか、という疑問が残る。どのような文学作品も、書かれた当初は古典でも伝統でもなかったのである。この問題に取り組むには、まず文学の生命は文体の独自性にかかっており、文体とは作家の声であって、作家の声とはその人の人生を貫く感情だという自明の理を受け入れる必要があるだろう。デカルトは「全ての概念は情緒経験を通して初めて感じられ、理解し得るものとなる。知的理解は心から生まれる」と言っていなかっただろうか。今日古典と呼ばれる厳めしい装丁の倫理書さえも、それが時代時代を下って人の心を動かしてこなかったとしたら、残らなかったはずである。歴史であり、未来であるようなこの力、これが国語の生命と呼べるものではないのか。文学作品を正当に評価するにあたって、既存の評価を避け、衒学の誘惑を斥けることは、難しいが、どうしても必要なことだ。文体の価値は大きい。おそらく内容よりも大きい。水村氏の労作を貫く文体は、憂国のメランコリーを立派に表現しており、それが内容の説得力を生む。そうか、日本語は危機に瀕しているのかと思わせる一貫性がある。金谷氏の文体には、いや、日本語は死んでいない、と信じさせる喜びと純粋な驚きが隅々にまで響いている。理論的争点、概念的議論は、それら中心的な文体の推進力に、約定通りの形を与えるものにすぎないとさえ思われる。

水村氏の感情は制度によって保証され、よって彼女の文体は政治にベクトルを向けている。金谷氏の感情は人生によって潤され、その文体は文化に内在する生命と未来にベクトルを向けている。どちらをよしとするかは、読者自身が歩みたいと望む方向にかかっている。言語の未来を決定するのが政治なのか、それとも、与えられた言葉の意味を日々刷新しながら生きることを我々に強要する新鮮な情緒経験なのか、この問題も、読む人それぞれの立場の問題だろう。

しかし、現代の真の問題は、言語の制度と言語の生命を同時に考えることが出来ないということだ。水村氏の著と金谷氏の著は対位法的に響き合い、この問題を浮かび上がらせるように思う。
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形式:新書
橋本進吉の流れをくむ学校文法が、日本語の説明体系として破綻していることはもはや明白だ。程度の差こそあれ、ほとんどの言語学や日本語学者が学校文法に批判的だ。著者の金谷武洋も、カナダで日本語を教える教師で、三上章の文法理論によって主語廃止論を唱えている。

水村美苗の『日本語が亡びるとき』に対する反論という形をとっているが、実際には金谷武洋の日本語と言語に関する議論のダイジェストといった趣。外国で日本語を学ぶひとは激増していて、話者の減少という異様な意味での「滅び」には全く瀕していないこと、日本語にある「免疫」によって、外国語の語彙や概念が流入しても言語の本質が守られること、などが語られる。

さらに、述語中心の日本語に内在する「地上の視点」と主語・述語の二本立ての英語に内在する「神の視点」の対比という文明論にまで及んで、宮部みゆきの小説と、中島みゆきの歌詞が分析される。

ただし、小さな本に多くを詰め込んでいるので、著者の日本語論を知るためには日本語に主語はいらない (講談社選書メチエ)を読んだ方がよい。
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