ことさらに講談社を持ちあげるわけではありませんが、
岩波書店と並び、書籍の厳しい校閲については定評のある講談社校閲局のこと、
100年に及ぶ出版事業の校閲ノウハウが本書には蓄積され、
たいへん判り易くまとめられております。
たとえば、「背負う」という言葉があります。
正しくは「せおう」と読みますが、「しょう」と読まれる場合もあります。
漢字で書けば、「日本の政治を背負った」も「ヤクザの代紋を背負った」も同じですが、
ひらがなに開いて書くと、「日本の政治をせおった」「ヤクザの代紋をしょった」と、
区別して表現した方が、ニュアンスを伝えやすい場合もあります。
「背負う」という言葉がもつ複合的な「相」を、状況によって書き分ける工夫。
そうしたことまで踏みこんで、校閲作業の繊細さと奥深さをも教えてくれるのが、本書です。
ただし、校閲作業では、あくまでも「背負う=せおう」という基軸を頭に叩き込んだ上で…
という前提を忘れてはいけないことも押さえつつ説明していることが天晴れです。
正しい表記と用語に関する実に細かい文例や用語集が完備されていることは
言うまでもありません。
また、わかりやすく読んでもらうための漢字とひらがなの割合に関する、
悪例と良例の比較など一目瞭然にわかる工夫も、まことに実用的です。
書き方や表記の統一ルールをしっかり守って、書籍全体の整合性を保たせる…
というだけが校閲ではないことを豊かに学べます。