片岡義男というのはとっても好き嫌いの分かれる作家ではないかしら。あの角川文庫の赤い背表紙を見るだけで買わずにいられなくなっちゃう人もいれば、あの赤本だけは死んでも触らねえぞ、と堅く誓ってる人もいそう。でもこの本は、その後者の硬派ちっくな人にこそ読んでいただきたいな、と思う。
もともと著者はエッセーの中などでも、時おりとても鋭い筆致で現代文化や社会批判をする人だった。今回はそれが「筆致」を越えて、がっちりとした「論調」を構築し、物凄いヴォリュームで読者を圧倒する。
タイトルがちょっと曖昧なのだけど、あくまでも「日本語」というのはある側面のみを表わしたものであり、ここでは日本という国の、特に戦後の歴史の全てを「対アメリカ」という図式をもとに批判している。
まず湾岸戦争時の日本の行動を引き合いに出し、憲法第9条についてその成立過程や意義についてとても明解に論じ、さらにケネディ暗殺をめぐって、今だ明かされないアメリカの産軍複合体の闇の部分について書かれたりしており、正直ここだけでもこの本は面白い!
そして現代の日本を「法人資本主義」というみごとな言葉でおきかえ、絶えまない消費の促進が「変化し続ける現在だけが世界であり、それ以外に世界はない日常」をつくり出したと記す。なかなかでしょ?
つまり、日本人は民主主義の成立過程を経ず、十分な「市民」という意識を持たないで強大な資本だけを手に入れてしまった。だから「儲け」を度外視した形で進めなければならない国際関係の政治的な調整ということがらに、日本の政治家は全く無能、というわけ。そういった日本という国家が「国際化」なんてことを正面から堂々と言えるのかしら。パパ・アメリカの言うこと素直に聞いて、自衛隊をやたらとイラクに放り込んでいいのかしら。やっぱり疑問は残るなあ。
そして日本の若い世代については、「致命的に遅れたままの教育システムから供給される、遅れていることに気付いてもいない人材」と酷評されている。さあ、若い皆さん、反論できるくらいに頑張ろうねっ!