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日本脱出記 (ペーパーバック版)
 
 

日本脱出記 (ペーパーバック版) [ペーパーバック]

大杉 栄 , 大杉 豊
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商品の説明

内容紹介

東京・神戸・上海・マルセイユ・リヨン・パリ
「初版壹萬即日賣切増版續々出來」
巨大ベストセラーが蘇る!

1922年――、
アインシュタイン博士来日の狂騒のなか、秘密裏に脱出。
有島武郎が金を出す。
東京日日、改造社が特ダネを抜く。
中国共産党創始者、大韓民国臨時政府の要人たちと上海で会う。
得意の語学でパリ歓楽通りに遊ぶ。
獄中の白ワインの味。

「甘粕事件」まで数ヶ月。大杉栄38歳の、アナーキーな旅行記!

「探偵の幾千もの怪しい眼が彼の行方を血眼で捜索し、あるいは露都に、あるいは北京に、上海に、広東に、ハルビンに国民の眼が向けられる時、彼は巴里官憲に抵抗して捕縛された、この時突如として『改造』編集局に現れたのがまがいなき彼自筆の趣味深いこの一篇だ」(『改造』1923年7月号広告)

「厳重なる警戒網を破って国外に脱出し天下の耳目を蠢動せしめたる、日本無政府主義の巨頭大杉栄氏外遊の真相はことごとく本書に描出せられたり。神出鬼没を極むる脱出記あり、仏国官憲の暴虐を罵る獄中記あり、追放記あり、巴里女の妖艶を描ける買淫記あり。しこうして欧州社会運動の現状よりロシア革命におよび、無政府主義とボルシェヴィズムの根本的差異を論じて氏が主張と態度とを明らかにす。全巻痛快にして壮絶、一代の風雲児大杉栄氏の真面目は髣髴として紙上に躍動せるを見る」(アルス社広告)

レビュー

『東京日日新聞』、1923/11/07
「彼の最近の面目がギラギラと立体的に躍っている」

登録情報

  • ペーパーバック: 208ページ
  • 出版社: 土曜社; 初版第1刷版 (2011/4/10)
  • 言語 日本語
  • ISBN-10: 4990558707
  • ISBN-13: 978-4990558703
  • 発売日: 2011/4/10
  • 商品の寸法: 17 x 11.4 x 2.2 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.5  レビューをすべて見る (2件のカスタマーレビュー)
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By nacamici トップ1000レビュアー
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大杉栄の絶筆とされる書。ベルリンで開催された国際無政府主義大会へ出席するため、上海経由でパリに到着、そこで足止めをくらい、メーデーで演説をして逮捕および禁固されるなどして、結局日本に送還されるまでの顛末。享年38。いまのホリエモンと同い年。そしてチェ・ゲバラは享年39。だから何というわけでもないが、この年代で社会にただならぬ影響力を及ぼす男はどの時代においてもどの国においても危険視されるものなのだろう。アナキスト・大杉栄の思想については本書を読んでもほとんどわからないが、そのコスモポリタンぶり、プレイボーイぶりが軽快な筆致の文章から伝わってくる。パスポートを偽造し、偽名を使って当局の目をくらまし、どこからともなく金を工面して踊り子とよろしくやったりして、監獄に入ったら入ったで酒をおぼえたり、壁の落書きに関心したりしている様子は痛快ですらある。アナキストは好奇心と楽観主義の人でもあった。外国語が下手で奥手で生真面目、という典型的日本人のイメージにはまったくあてはまらない。たとえばこんなことを書いている。

「うちからか、パリからか、どっちかから金の来しだい、一つ逃げだしてやろうか。そしてこんどは、まったくの不合法で、勝手にとびまわってやろうか。パリへも帰ろう。ドイツへも行こう。イタリアへも行こう。そのほか、行けるだけ行ってみよう」

文章ものびのびしていていま読んでもまったく古さを感じさせない。大杉はドイツへ行ったあかつきにはイタリア経由で帰ろうと、ドイツ語のほかにイタリア語も勉強していたという。すでにパリでは女を口説き、裁判長とわたりあうほどフランス語に習熟していた。有名な「一犯一語主義」には、彼の語学に対する並々ならぬ意気込みが表れている。これだけ語学に通じていたからこそヨーロッパを中心に世界中にちらばる同志たちとつながって「運動」の中心となることができた。もし大杉栄が戦後に生まれていたら、ネットで世界が彼の生きた頃よりもっと密につながる時代に生まれていたら、どんな仕事をしだたろうか。

この旅で目的を達することなく帰国して2カ月ののちに関東大震災がおこり、大杉は憲兵大尉甘粕正彦によって惨殺された。
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エッセイストの井上春樹氏より、つぎのような書評を寄せていただきました。(土曜社)

関東大震災の犠牲者を忘れてはならない
―「イマジン」をBGMに読みたい本―

 3・11の大地震に遭遇したのは羽田空港で、「帰宅難民」として川崎のコリアタウンを通過した。大地震とコリアの連想から、88年前の関東大震災時の朝鮮人虐殺を思い出した。壊滅的被害を受けた横浜の被災民の間に広まり、恐るべき速度で多摩川を渡って北上した朝鮮人暴動のデマ。多くの朝鮮人だけでなく、訛りのある東北出身者まで、興奮した自警団らになぶり殺された。地震や火災からは生きのびながら、理不尽な死に目にあったのは、朝鮮人たちだけではない。労働組合の活動家たちやアナキスト・大杉栄らも犠牲となった。震災後の混乱に乗じて悪事を企んでいるに違いないという憶測だけで、大杉は憲兵隊に拉致され、虐殺された。一緒にいた内縁の妻・伊藤野枝も、わずか6歳の甥の橘宗一までも巻き添えになった。

 大杉が当時の軍部に何故これほど憎まれたのか、彼の遺作「日本脱出記」を読めばなるほどと思い当たる。厳重な監視の目を逃れて日本を脱出した大杉はパリに到着する。だがめざす国際アナキスト大会は延期され、労働者の街・サン・ドニのメーデー会場に向かう。そこで聴衆に街頭行動を呼びかけた。得意のフランス語で演説したのだ。東洋人のアジテーションは喝采を浴びた。逮捕された彼を追いかけ、人々は革命歌を歌って励ます。移送されたのはラ・サンテ(健康)という皮肉な名称の刑務所だ。そのせいか獄中の大杉はすこぶる元気だ。もともと飲めないワインを試してみたり、愛娘・魔子に贈るメッセージを綴ったり、獄中生活を楽しんでいるかのようだ。

 外国語を駆使して秘かに海を渡り、各国同志との交流を拡げ、その活動をメディアに流して宣伝し、資金を得る。堺利彦の「売文社」で学んだ手法を活用した「闘い」を大杉は果敢に実践した。これほど活発に反抗する敵を権力が放っておくわけがない。国家に害をなす危険人物として悪宣伝を流し、甘粕大尉たち憲兵に虐殺させたのだ。しかも3人の遺体を古井戸に投げ込み、犯行の隠蔽を図った。大杉栄という人物も、精神も、日本帝国には存在しなかったかのように。

 だがその試みは失敗した。大杉たちの思想は、自由を奪われ、貧困に苦しみ戦争に反対する人々に受け継がれてゆくのだ。たとえば、大災害の後、決まって流されるジョン・レノンの「イマジン」の歌詞を注意深く読んでみればよい。この歌が描く世界こそ、アナキスト・大杉の求めた世界そのものではないか。

 「日本脱出記」は、彼の思想を理解するための格好の入門書である。

井上春樹(エッセイスト)
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