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10 人中、9人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
竹森教授の冷静で論理的な震災復興の提言です,
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レビュー対象商品: 日本経済復活まで―大震災からの実感と提言 (単行本)
著者は、日本のエコノミストの中で、たぶん最も信頼できる人の一人だと思っています。以下、そうしたバイアスがあることを前提に読んでください。いつもながらの論理的で分り易い文章です。ただ、著者の他の本と違って、経済学的な論理で押してゆくと言うより、著者も書いておられるように、 かなり情緒的な書き方がされています。特に第一部の東北大震災の発生からの日記風な書き方はそうなっています。しかし、決してセンセーショナリズムに 流されず、冷静な判断で書かれています。3・11から3か月近くたって、ようやくこうした本が出てきたと嬉しくなりました。 第二部には、この震災に対する著者の提言と今後の予想が経済的な観点でまとめられています。 それは、簡単に要約すると、以下のような内容です。 (1)この震災には「天災」の部分と「人災」の部分が有り、その影響と対策を考える場合、それを分けて考える必要がある。 前者は、阪神大震災の時の延長で考えればよく、その後の経緯がアナロジーとして利用できる。 ただ、東北大震災はそれに「人災」の部分が加わっており、より深刻で影響が大きく深いために、そのアナロジーは使えない。 (2)今回の震災の「人災」による影響の部分は、むろん原発によるエネルギー供給に大きなブレーキがかかった点である。 その観点から見ると、今の状況は敗戦後の状況に類似している。つまり今後長期的にエネルギー供給に制約がかかり、その足枷を考慮した経済の推移を考えなければならない。 そして、著者は、戦後の復興の経過を鏡にして今後の経緯を類推して見せます。 (3)原発抑制による、エネルギー供給の制約は、日本全体の供給サイドを牽制する原因になり、現在の需要過多による需給GAPの解消が見込まれる。そして、供給制約が 物資の欠乏感を招きそれが原動力になって供給増加を促す要因になる。それがうまく回りだせば、経済成長の原動力になる。 その際のエネルギー制約は、石油による火力発電に頼らざるを得ず、石油依存の体質に戻るだろう。 (4)世界的に原発抑制の動きが広がり、石油への需要が拡大する中で、日本には、成長に伴う必要な石油確保を目的とする、大きな輸出ドライブがかかるだろう。 そのその成否が成長の可否を決定するだろう。 後半、若干、疑問な点も有りますが、大体において正しい指摘だと思います。 ただ、最も心配なのは、原発抑制によるエネルギー制約が、需要も抑制して縮小均衡に陥らないかと言う点です。 すべてを控えて我慢しようと言ったキャンペーンが行われ、日本人全体が委縮してしまう危険性が非常に大きく、この点のみ著者の予測が外れなければ良いと願って 止みません。
2 人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
専門家の強さと脆さ,
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レビュー対象商品: 日本経済復活まで―大震災からの実感と提言 (単行本)
第1部で、発災以後の数か月の状況と、自身の感じ方を述べておられます。大変誠実な文章で、読者も「あのとき自分はこうしていた、こう感じていた」と思い出さないではいられないでしょう。第2部は、経済学の専門家として、震災以後の日本経済の見通しを整理しています。阪神淡路大震災や、戦後の復興のケースを引きながら、ストックの損害は小さくないものの、代替する資源が適切に利用される限り(また、長期デフレ対策として緩和されていた金融が利用される限り)、日本経済はむしろ復活するであろうことが述べられています。 専門家として冷静な主張だと思います。 ただ、原発(人災)に関する記述は、やや非科学的で、冷静さを欠いてしまっているような感じがします(たとえば、「福島第一原発と東京はわずか240キロしか離れていない」などという記述。あるいは「事故後の復旧について『工程表』など作っても意味が無い」などという記述)。 専門である経済学に関する「強さ」「冷静さ」に対して、他の分野についての知識および知識の吸収能力については非常に危ういです。 ただ、その危うさも、著者の誠実な態度によって、読者が感知できるものです。いろいろな言説が流布する中、むしろ、知識人の言論、読者自身の態度を省みる上で、学ぶところが多いと思いました。
1 人中、1人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
人災の克服は難しい,
By 秀文 "シュウブン" (福島県福島市) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 日本経済復活まで―大震災からの実感と提言 (単行本)
この本で参考になったことは、天災は意外と速く克服できるというもの。しかし、人災は、克服するのが大変だということだ。どうして人災が起こるのか。「想定外」の真の意味はどこにあるのか。人間の思考の限界についての話は、特に示唆に富んでいた。原発に限らず、高度なテクノロジーはこれからも事故を起こし続けるのだろう。所詮人のすることだもの。始めた当時はクオリティの高い人が携わっていたとしても、時代を追うごとに世代が劣化していくことは十分にある。また、クオリティの高い国から低い国に輸出されれば、さほど時間もかからず、事故は顕在化する。 大雑把な計算だが、福島の原発の補償は当初の2年で10兆円と試算されているらしい。収束するのに一体いくらコストがかかるんだ! 人災をどう克服するのか。いや。もしかしたらできないのかもしれない。人の能力に限界がある限り、「想定」にも限界がある。後処理も大切だが、新たな事故が起きないようにすることも大切だ。でも、どうやて?「想定」が完璧にできない以上、事故が起きても被害の少ないものを使うしかない。しかし、これも「想定」に過ぎないのか。過去の経験から大丈夫とわかっている範囲で・・・。いや、ちよっと待て、過去は何年遡ればいいのだ?100年?1000年?1万年? 思索にふけるきっかけになる一冊でした。
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