題名からは日本経済・企業に関する“モノづくり”に傾斜した“根性シリーズ”のようにもみえるが、実際は東日本大震災を踏まえたうえで、日本の経済成長のためのマクロ経済あるいは産業集積論に立つ開明的な提案である。
本書の論旨はおおざっぱに言えば
- 自然災害自体は一般には長期的には経済成長にマイナスではなく、むしろ創造的破壊につながる場合も
- 日本経済は震災前、90年代から凋落している
- 成長への回帰には元来粘着的な制度の変更が必要でそれは可能
- その鍵の一つはグローバル化
- 日本は実はグローバル化において主要国に比べ遅れている
- グローバル化は経済成長につながる
- 日本には競争力がありながらグローバル化していない臥龍企業が各地に存在
- TPP推進はグローバル化推進につながる
- もう一つの鍵は地方における産業集積の創出
- 産業集積は経済成長につながる
- 日本では東京への一極集中が行き過ぎ
- 地方での手厚い公共投資は建設業依存となり産業集積、経済成長を阻害
- 日本では競争力のない既存企業(ゾンビ企業)の保護が行き過ぎ
- 産業集積の創出には“企業・人のつながり”や技術を核とした政策が必要。“特区”を作るのが良い
というもので、その各論点にはそれなりのバックデータがある形になっている。
個々のポイントでは、例えば
1.海外への生産移転によっても、本当に長期的には経済成長あるいは雇用は損なわれないのか?
2.産業集積と言っている観点がどうしても製造業中心の観点になっているのではないか?
3.“特区”政策もいいが、特区は税金を下げるだけ十分で、むしろ民間の自発性に任せ、首都機能分散等役所自身がもっとやることがあるのではないか?
4.政策コストは増税、それは消費税しかない、という議論を最後に実に簡単にしているが、(最終的にはそうだろうが)やや政策当局者寄りすぎではないか?
等疑問に感ずる点も多い。
ただしまさに待ったなしの日本経済あるいは産業の観点からは、本書の骨子となっているグローバル化(含 TPP推進)と産業集積の(というより一極集中の是正)の推進という処方箋には大いに賛同したい。