日本神話と類似する東南アジア、ミクロネシア、中国などの神話の紹介は、もはや、「似ている」というレベルを超えているものもあって、新鮮で面白かった。
しかし、後半あたりから始まる自説の展開は、根拠が浅いものが目立ち、多少、げんなりした。
例えば、ギリシア神話と日本神話との一致が、他の神話との一致より、はるかに特殊的で顕著である理由として、
「ステップ地帯のイラン系遊牧民の神話が、アルタイ系民族によって受けいれられ、朝鮮半島を経由してわが国に持ち込まれた結果」(P.220)
という説を主張しているが、この説は、別の箇所で述べている
「狭義の「オルペウス型神話」は、実は旧大陸においては、ただ日本とギリシアにだけ見出される」(P.142)
という事実と矛盾する。もし、そのような経由で伝達してきたのなら、狭義の「オルペウス型神話」がアルタイ系民族や朝鮮半島でも見出されなければおかしい。また、仮にそれらで早々に該当の神話が失われてしまったのだとしても、著者の主張する伝達の途中で、他の地域に流布して残っていてもおかしくない。
しかも、この説に関わる朝鮮半島の神話と日本神話の類似についてはP.186-195で述べられているが、天孫と海神(河神)の娘との結婚や亀に助けられての移動などと言ったギリシア神話とは無関係の類似をあげているだけである。
「ギリシア神話=朝鮮半島の神話=日本神話」となるような類似神話をあげられなければ、説として根拠不十分と言わざるを得ない。