今年も64回目の8月15日が巡ってきた。2年程前に「失敗の本質‐日本軍の組織論的研究」を読んだが、その海軍版の「失敗の本質」を手にした。著者は昭和5年(1930年)に海軍兵学校卒(第58期)、海軍大学校卒、連合艦隊参謀・海軍中佐で終戦となる。本書はAnthologyで9編が収録されている。各編単独で発表されたもので各々の関連性はないが、旧帝国海軍の様々な事象に大変参考になる。そもそも海軍においては、明治の日本海海戦の輝かしい戦勝の幻惑が続く。戦争の本質に対する徹底的な思考を欠き、艦隊決戦での勝利を究極の目標として永年整備と訓練が続いた。また情報への関心が希薄過ぎた。情報を研究する機関も、情報収集要員の教育機関もない。自己の実力の自信と過信、更に敵を軽侮する心の驕りに心の弛みが大きい。参謀本部と関東軍と同じで、軍令部は連合艦隊を抑えられず、また軍令部と連合艦隊の間での意思の疎通の欠如が甚だしい。そもそも連合艦隊起案の真珠湾作戦構想の折衝紛糾も、山本長官の構想の提起方法に問題あり、また軍令部との折衝も先任参謀の黒島亀人大佐(海兵44期)と戦務参謀の渡辺安次中佐(海兵51期)が行うも、両人とも軍令部勤務経験がないこともギクシャクさせただろう。その後も感情のしこりを残し、執拗に反対した軍令部の後での負い目が、後々まで意思疎通問題として尾を引いた。それはミッドウェー作戦に関してもまた連合艦隊のごり押しに続く。ということでこれらの問題に対する再確認が出来た。尚いつかは海軍「反省会」の内容開示した出版も期待したい。米国著名史家のモリソン博士指摘の、最大級の賛辞を贈る指揮官(田中頼三少将・海兵41期)、最も無能な指揮官(西村祥治中将・海兵39期)について、著者が2将軍の事実とコメントを加えており興味深い。(著者は2005年永眠)