超現実的な設定を作り上げた上で、その中で論理的な本格ミステリを展開する作風が持ち味の山口雅也。
今回の舞台は「外国人がイメージする間違った日本像」そのままの日本だ。
設定としては、「日本に行ったことのない、無名のアメリカ人推理作家が書いた小説を、山口雅也が邦訳した」ということになっている。
もともと、彼は海外作品の翻訳文を意識した文章を書くので、設定とぴったりマッチしている。
3つの短編が収められた連作短編集である。「密室でハラキリしたビジネスマン」など、起こる事件も「勘違いニッポン」にふさわしいものばかり。
事件に挑むは、日本人の継母に育てられて日本に憧れを持つようになったアメリカ人、その名も「トーキョー・サム」!彼が念願の来日を果たし、事件に巻き込まれるという形になっている。
彼は初めての来日であるから、当然間違った日本観を持っている。実際に日本に来てその誤りを正されるわけだが、正すほうもやはり(現実の日本と比べると)間違っている、という二重のおかしみがある。かなりメタな知的遊戯、とでも言えるだろうか。
謎解きはといえば、かなり突飛なものも含まれている。しかしそれも、この突き抜けた舞台設定においては、しっくりくるような気がしてしまうから不思議である。
とにもかくにも、ミステリ好きなら読んで損はないし、ミステリにそれほど興味の無い人にも、なかなか楽しめる作品になっているのではないか、と思う。