左巻きで有名な戦前派大江志乃夫先生が、つたない言語力で現地ガイドの言うがままなすがままに旅行してきた旅行記である。
よせばいいのに、あろうことかアカデミズムというバックボーンを駆使することなく、プライヴェートで訪れてしまった大江先生の苦労はページを繰るたびに伝わってくる。
大江を知らない元植民地で、戦争被害レポをしようとしたら戦場の自慢話を聞かされ、サハリンではなぜか韓国人にインタビューして別段なんともない答えに一人で感傷的になり、挙句には訪問記が余りにつまらないので持論の歴史観でほとんどの紙面を割き、果ては「観光の体制が整っていないので」と味方のはずの中国に見学拒否までされる。
「施設の公開の必要性を力説」したというが、「私はあなたの味方なんですよ?中国万歳!日本くらい売り飛ばします」くらいのことを口走っていても不思議でない人物だけに余計に興味がわく。
私は、実際大江先生が会った王さんに話を聞く機会を得たが、「憶えている。うるさい爺さんだった。見学させろ見学させろ本当にしつこくて、困り果てた。果ては中日友好にかこつけて(以下自粛)」と語っていた。
大江先生の冒険心には一応の評価はするものの、これではちょっと歴史に詳しいおじさんだったら、ツアーに頼んで書ける程度の中身に、少々辟易した。おじいちゃんの旅行記という感じだ。
490ページあまりの分厚い辞書みたいな本だが、文字も大きくて、なんの役に立つのかピントはずれな構図の写真も、ページの4分の1を割いている状態だから、割と気軽に読める。
ただ正直面白くない。
★1.5なのだが、0.5は大江先生の苦労に捧げるという感じで、内容的には★1つが適当。実際に同じ道筋をたどったら、自分で書いたほうがよっぽど面白いものが書けるかもしれない。