本書は日下氏にとってもこれまでにない特別な本だ思う。なぜなら自身の生い立ちばかりか、勤務していた長銀(日本長期信用銀行)の破綻に至る経緯などにまで言及しているからだ。さらに、日下氏のユニークな発想には定評があるけれども、その発想法をどのように獲得したかも述べられている。以下は各章の内容の感想である。
第1章 新しい時代を生き抜く頭の使い方
どのような学び方をすれば新しい時代に付いていけるのか、そのための要点が11項目挙げられており、示唆されるところがものすごく大きい。この11項目だけでも本書を買う価値があるのではないか。また、本田宗一郎氏と菅直人氏の思考の違いが端的に示されていて、菅氏のような教条主義者が今の時代にいかに合わなくなっているのかもよく分かる。
第2章 変化してきた大学教育と人材登用
現在の大学教育の欠点を指摘し、これからどんな人材が必要とされるかが書いてある。日下氏は「リスクを取って自立した生き方を目指せ」と説いているが、なぜ日本にシリコンバレーのようなところが生まれないのかということにも納得させられた。
第3章 国や企業から自立せよ
ソニーの創業者・盛田昭夫氏の先見性が詳述され、ホリエモン(堀江貴文氏)と村上世彰氏の詳細な分析もある。また、大銀行は潰れないという神話を自ら壊してしまった長銀の話には非常に考えさせられた。
第4章 大震災が告げた時代の転換期
関東大震災後の世界には大きな変化が訪れたが、東日本大震災後も同じだと日下氏は予想する。「賢者は歴史に学ぶ」と言われる。本章で現代を歴史的な視点からとらえ直している日下氏の手法は見事だ。ここを読んで関東大震災時は関西のほうが関東に比べて圧倒的に経済的な発展を遂げていたことを初めて知った。
第5章 国は原発事故で遁走した
日下氏は、福島第1原発事故後の放射能汚染について非科学的に恐怖心をあおる現在の風潮を鋭く批判している。日本が原発を導入した経緯にもふれ、一般の人がよく知らない先進的原発のトリウム溶融塩炉や地下原発も紹介されている。特に原発事故で思考停止になっている人たちにはぜひ読んでもらいたい。