現在親しまれている「推理小説」という呼称を初めて使用したといわれている木々高太郎の作品集。
医学者らしく、精神分析の手法を小説に取り入れようとしているのが特徴です。
当時探偵小説界の重鎮であった甲賀三郎の「探偵小説非芸術論」と木々の「芸術論」との論争からも分かるように、探偵小説を文学としても高いレベルに到達させようという高い志を筆者は持っていたようです。
その姿勢は当時の探偵小説界としては異例の直木賞受賞からも伺えます。
現在の水準から見ると、推理小説とは呼べないようなものがあったり、上手く事件と内容が調和していないものも見受けられますが、彼の高い理想が後進の作家たちに与えたであろう影響は見逃せません。
歴史的な価値だけではなく、『文学少女』等の印象的な短編も含まれていますのでぜひ御一読を。