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葛山二郎「赤いペンキを買った女」は、シリーズキャラクターの花堂琢磨弁護士の活躍する、戦前(昭和四年雑誌掲載)では珍しい法廷ものの本格ミステリ。トリックは小粒ですがスッキリときまっていて、法廷での検事と弁護士の白熱した攻防もおもしろい佳作です。これで興味を持った方は、さらなる花堂弁護士の活躍が読める国書刊行会刊『股から覗く』をどうぞ。
近年再評価されつつあり、文庫版で傑作集も出た大阪圭吉、「とむらい機関車」、「三狂人」、「寒の夜晴れ」、「三の字旅行会」の四短編が納められていますが、どれも作者の代表作と呼ぶにふさわしい、短編本格ミステリのお手本にしてもいいくらいのできばえです。傑作選などではなく、ぜひ全集を出してほしい作家の一人です。
蒼井雄の長編「船冨家の惨劇」はアリバイくずしの名作、全盛時の鮎川哲也の作品に匹敵するといえば、どれほどのものなのかわかってもらえるでしょうか。以前一度読んでトリックやら犯人やらミステリの大事なところを覚えていたにもかかわらず、十分におもしろく読めました。このほか、怪しい雰囲気漂う中編「霧しぶく山」も収録。
巻末には、中島河太郎「日本探偵小説史」がついていて、これも読み応えのあるうれしいおまけです。
本書のようなアンソロジーを読むと、忘れられてしまった作家、自分の知らないミステリの名作がまだまだ数多くあるんだろうなと思わされます。各出版社の方々には、新作ばかりに目を向けず、そういった作家を一人でも多く、作品を一作でも多く紹介してくれるよう期待します。
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