本DVDには1時間枠3本分、「怪談皿屋敷」と「四谷怪談前・後編」が収録されています。
東京12チャンネル(現テレビ東京)と言う事で少々チープな内容を予想していたのですが、意外にプロダクションバリューが高くて驚きました。
・怪談皿屋敷。
歌舞伎の名門出身の波野久里子さん(お菊)、そして大山克巳氏(青山主膳)、島田正吾氏(念仏佐治兵衛)に野性的二枚目若林豪氏(舩瀬三平)が参加。
お菊、三平の恋を邪魔する悪役、三平の義兄ながらお菊に横恋慕する旗本主膳を演じる大山氏の脂ぎった演技は惚れ惚れとする程憎々しく、同じく新国劇の重鎮島田正吾氏演じるお菊&三平の後見人、町奴の元締め佐治兵衛が主膳に切る深い怒りを湛えた渋い啖呵は感動物です。
主膳がお菊に将軍家から頂いた皿を割ったと難癖をつける時に、お約束の和服女性が帯を引かれてクルクル回るシーンが御座います。
若林さんの襟元から除く胸毛にドキリとさせられましたが、当時江戸っ子は毛深い事を嫌った筈では?と疑念が湧きました。
生前のお菊がやられっ放しではない気の強さを示す脚本も斬新な解釈です。
・四谷怪談〜稲妻の巻〜、〜水草の巻〜
鶴屋南北の原作を皿屋敷も担当した成瀬昌茂氏が大胆に脚色、岩にさらなる負い目を加えると共に直助権兵衛を極悪キャラに設定しています。
こちらのキャスティングも豪華で主役のニヒルな浪人民谷伊右衛門に田村高廣氏、直助に東映往年の大スター東千代之助氏、お岩には井上和香さんの母上・嵯峨京子さん、小平には睦五郎氏、岩の妹お袖は榊ひろみさん、そして夜鷹のおいろ役で新東宝[憲兵の幽霊]や大映「悪名シリーズ」の懐かしいセクシー女優万里昌代さんが配役されています。
問題のショックシーンはTVとは思えないエグさで、毒に侵された岩の顔面のシンメトリーの崩れ方は過去最大級でした。
移動撮影を多用したカメラも、牧野由多可氏の音楽、鳥居塚誠一氏の低予算を感じさせない美術も見事です。
歴代の四谷怪談の映画化作を幾つか拝見しましたが、当時の視聴者もテレビでこれだけの物が観られたら満足だったと思います。
怪奇・怪談映画ファンの方には大いにお薦めです。