作者は、自身が本文中でいうように「特別な知識」を持つ人である。
その特別な知識はおよそ40年にわたって、その道で身につけられたものである。
例えば、遣り手の刑事が事件の第一報を聞いたときに、
直感で「他殺」あるいは「自殺」という強い直感を持つように、
「蛇の道は蛇」、どんな世界でもその道のプロはこうした能力を持つ。
この本では、著者がその独自の知識から、巷間伝えられている結論と
異なる事件であると直覚し、独自に調べた12の“怪死”(従って犯罪が臭う)事件の
真実を推論してゆくものである。
その推理、推論は、ときに作家としての表現力がリアリティーを与え、
眼前で目撃したかのような錯覚を与える箇所もある。
例えば当時の国鉄総裁であり、作者の父の高校・大学の同級生であったという
下山定則氏の“拉致・絶命”の場面では、およそ「堅気」では書くことができない筆致で描かれている。
また、豊田商事の永野会長の刺殺事件の犯人の考察においても、作者独特の推理を読むことができる。
世に、怪死事件を扱った本はいくつもあると思うが、力道山についての推論は、
ロバート・ホワイティングの「東京アンダーワールド」の記述ともほぼ一致している。
全編に渡ってかなりの説得力を持っており、読まされてしまう。
それにしても、戦後60年以上経ったこの国の、政財界、官僚、マスコミの闇は未だに深いことに嘆息してしまう。
作者も「それが残念ながら、日本の民度なのだ」と結んでいる。