久しぶりに読んだ大嶽さんの本でした。20年前に出たあの名著”日本の防衛と国内政治”の中で、大嶽さんは、自信を持って、”政治学なるものが日本政治の分析に対してなしうる貢献”を語っていたわけだけど、この中で描かれている現実の日本政治の姿は、あまりにも悲しいね。政治だけではなく、それを取り囲む世論の枠組みも、グロテスクな姿をさらしているだけのようです。過去の日本の新聞が垂れ流していた幼稚な”戦争と平和”という善悪二元論は、確かに消えました。でもそれに代わったのは、テレビにより、無差別に流される、”腐敗と改革”という別な二元論です。でももはやこれは二元論というよりは、視聴率だけをメルクマールとした知性の退化としかいいようのない、シニシズムというのがその実態!のようです。この現状に対して、著者は成熟した現実主義、道徳禁欲主義からの脱却、つまり可能性としての政治の復権を提唱します。著者は必ずしも絶望してはいません。なぜなら著者によると、防衛問題については、90年代の日本は非武装主義を克服することに成功したからです。最後のあとがきで述べられているテーゼ、”今日の日本政治にとって最大の不幸は、改革派が常にマクロ経済的には、誤った政策を掲げ、政権をとったとたんにそれを推進してきたことにある”は、政治学者である著者の政治学を越えた大胆な結論です。