岩城宏之さんも武満徹さんも鬼籍に入られましたが、生前の親交が偲ばれるような暖かい仕上がりになっています。代表的な合唱曲で、多くの方に聴いてほしい作品群ですね。20年以上前の録音ですが、最初にこの演奏を繰り返し聴いたものですから、スタンダードになっている演奏です。
武満徹作曲の混声合唱のためのうたには、「小さな空」「死んだ男の残したものは」「さくら」「翼」「島へ」など多くの合唱愛好人に親しまれている合唱曲です。感傷的とも言える懐かしい音楽世界を、透明感溢れるハーモニーで描き上げています。「ノヴェンバー・ステップス」のような時代を切り開いた作品とは違い、肩の力を抜いて聴くことが出来ます。
「小さな空」が大好きです。リスナーをノスタルジーの世界へ誘うような伸びやかな合唱曲で、東京混声合唱団は良い意味でとても抑制された合唱を展開しています。子供の頃、真っ暗になるまで遊んだ幼いあの日の情景を思い浮かべながら、慈しむように大切に作られた小品ですので、ロマンチストの武満徹の性格が、歌詞とメロディの随所にうかがえます。
全曲の演奏に共通しているのは、流れるようなメロディを武満徹の心のままを素直に合唱に表現しているところだと思います。東京混声合唱団の共雑物を削ぎ落としたような透明な合唱に好感を抱いています。一見平易に聞えますが、難しいハーモニーを合唱団に要求していますので、譜面以上に微妙な音程が要求されますが、上手く歌っていますね。
「風の馬」は難しい曲です。紡ぎ出される合唱によって武満徹の意図した音楽の輪郭を明確に描き出せるかどうかが肝要です。譜面も複雑で演奏技術や発声に高度なテクニックを要求される曲ですが、東京混声合唱団はお手本のように歌い上げています。