このCDの演奏団体である大阪ハインリッヒ・シュッツ室内合唱団は、とても素直で伸びやかな声質を持った合唱団です。木下牧子さんの紡いだ美しい合唱の世界を明確に描いており、全国の合唱団の人達にとって、お手本のような演奏を提示しています。日本語を明瞭に歌う明るい発声がこの大阪ハインリッヒ・シュッツ室内合唱団の際立った特徴だと思います。
1曲目の「祝福(ティオの夜の旅)」冒頭のユニゾンの豊かさは他ではなかなか聴けませんよ。無伴奏合唱作品ばかりを集めていますので、アンサンブルが良くないと全てが台無しになるわけですから・・・。
混声は勿論のこと、女声のノン・ビブラートの発声から生み出される響きはとても透明感があり、好感を持って聴いています。男声合唱もラストの「祝福」を聴けば良く分かりますが、倍音を含んだ豊かな響きを内在しており、ピッチの正確さとも相俟ってとても聴きやすい素晴らしい演奏だと思いました。柔らかい発声の男声合唱というのはなかなか聴くことが出来ませんからね。
多くの大学合唱団や一般合唱団で歌われている「夢見たものは・・」も当間修一さんの日本語を大切にする解釈が光っています。立原道造の詩を慈しむように丁寧に歌っていますね。絶えずレガートで歌われており、余計な飾り付けを廃し、只ひたすら楽譜に忠実に正確に歌っていますので、安心して聞く事ができました。
アンコールピースとしてもよく歌われている「鴎」も丁寧に歌われていますので、多くの合唱団の目標となる演奏だといえるでしょう。テキストとして用いられた三好達次の詩の世界を、木下牧子さんが格調高く、無限の広がりをもつ伸びやかな音楽を伴って、展開していきます。
作曲家の木下牧子さんが、演奏団体として、当間修一さんが指揮する大阪ハインリッヒ・シュッツ室内合唱団を指名されたのは、とてもよい選択だと思いました。
素晴らしい合唱のCDですので、是非多くの方に聴いていただきたいと願っています。