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大局的に見ると第二次世界大戦は人種差別、宗教差別、植民地主義、(共産主義を含む)全体主義がもたらしたカタストロフィーであったが、戦後処理にも多くの問題が見受けられる。これら戦前の諸問題、そして戦後処理がもたらした諸問題は現在、平成の世に生きる我々にも「直接」引き継がれているのであるから、著者が昭和天皇のご病気に際して自分なりに昭和史を総括したように我々もまた昭和という一大転換期に対して真摯に向き合う必要がある。
日支事変及び日米開戦に於る日本側の問題は一言で言うと、行政が軍部を(上層部から中級将校に至るまで)統率することが出来なくなったことにあり、それは明治憲法の欠陥に由来する。その点はマッカーサー憲法では是正されているのだが、元来、日本弱体化を主眼に起草されている上、急ごしらえである。「不磨の大典」とされた明治憲法の、起草時に誰も気づかなかった欠陥が日本を戦禍に導いたように、将来マッカーサー憲法が日本に破滅をもたらす恐れもある。
現在の第六期ともいうべき国体の得失について多くは語られていないが、統帥権干犯問題は是正された。世界に目を向けると、人種差別は随分軽減された。自由貿易が主流となった。共産党は信頼を失った。宗教問題は残っているが、戦前日本が苦慮した問題は中国共産党を除いてことごとく改善されている。「戦前の世界が戦後の世界のようであったならば、日本が戦争に突入する必要はなかったであろう」が、これは、日本の敗戦によって日本が支那大陸で果たしていた役割をアメリカが引き継がざるを得なくなったことと、日本軍の奮闘によってアジア諸国の独立が促進されたことが大きく影響している。日本の敗戦は決して無駄ではなかった。
しかしこの「昭和編」、「古代編」「鎌倉編」とは対照的に、頁をめくるごとに歯がみさせられる。
高校で習う歴史は、古代から始まって現代に近づいていく。ところが一番身近な昭和に入るころ、もう3年の2学期だったりする。だから、考えることもなく画一的な<情報>だけで昭和史を知ったつもりになる。これは本当に歴史学習のあるべき姿だろうか。何のために歴史を学ぶのか。それは、これからどう世界を形作っていくかを考えるためであろう。現代から遡り「どうしてそうなったの?」を追究することで、「だからこうなった」の理解も深まると思うのだが。
本作は、日本を第2次世界大戦の泥沼に引きずり込んだ<統帥権干犯問>が「どうして起こったの?」から、すべてが始まる。そこにはいろいろ絡まりあっていた事実がはっきりと浮かび上がってくる。国内の問題、そして国外の問題……。日露戦争後から昭和中期にかけての時期をひとまとまりにして「どうして?」を徹底追究する、歴史本としては名著中の名著である。
映画『マトリックス』の中でも問題提起されていたではないか。「問題は選択ではない。すべては因果関係の上に成り立っているのだよ」と。
「日本人だから読め!」ではない。たとえ批判的に論評されようとも、英訳され、韓国語訳され、中国語訳されることを期待せずにはいられない一冊。ひとりでも多くの人が、この本に接するチャンスを持つことを願ってやまない。